コラム

従来の対策では防ぎきれない...今後のサイバーセキュリティで「警戒」すべき5つのリスクとは

2023年12月12日(火)18時07分

加えて、リモートワークが普及していることで、従業員がオフィス環境外から会社のリソースにアクセスすることが増えた。外部からのアクセスを許すことによって、不正アクセスのリスクが増加する。取引先や従業員などによる外部からのアクセスで生まれるリスクを軽減するために、積極的な対策を講じることが重要だ。

対策としては、外部パートナーに対する審査と、継続的なモニタリングが必要になる。そして取引先などが自分の企業や組織のセキュリティ基準を満たしているかどうか確認するべきである。外部への露出を管理して制限し、厳格なアクセス管理を実施することも必要だ。多要素認証(MFA)を実装し、脅威インテリジェンスを活用すべきだ。

人工知能(AI)による脅威

3つ目のリスクは、人工知能(AI)による脅威だ。AIは様々な産業を革命的に変えているが、サイバーセキュリティ分野においても新たなリスクの扉を開いている。攻撃者はAIの力を巧妙に悪用し、新しい種類のAI駆動型サイバー攻撃を創出している。洗練されたフィッシング攻撃キャンペーン、自動化されたパスワードクラッキング(解析)、さらにはAI駆動型のマルウェアを実行するためにAIを利用するようになっているのである。

AI駆動型の攻撃は、従来のセキュリティ管理を回避して、脆弱性をより正確かつ迅速に見つけ出す能力をもつ。これに対抗するには、企業や組織が、AIや機械学習アルゴリズムを利用したリアルタイムの脅威検出と、予防のための進んだセキュリティソリューションを採用する必要がある。

またAIシステム自体が、その脆弱性を悪用されたり、乱用されたりする可能性がある。こうしたAIのリスクを防ぐには、堅牢な認証、アクセス管理、監査メカニズムなどの対策が不可欠だ。またAIシステムの脆弱性を特定して対処するために、徹底的なテストと検証プロセスを実施する。AIで生まれる新たな脅威に先んじて、効果的な軽減戦略を実施することで、組織はAI駆動型のサイバー攻撃がもたらすリスクを最小限に抑え、デジタル資産を守ることができる。

クラウドセキュリティの課題

4つ目は、クラウドセキュリティの課題だ。

現在、企業や組織では、さまざまなサービスがクラウド化されている。クラウド技術は、組織がデータを保存、アクセス、および管理する方法を革命的に変えた。しかし、それによって、機密情報の保護を確保するためにサイバーセキュリティで対処しなければならなくなっている。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シャープ、堺工場のディスプレイパネル生産停止 減損

ワールド

ニューカレドニア、憲法改正抗議デモが暴動に 国際空

ビジネス

野村HD、2030年度の税前利益5000億円超目標

ビジネス

午後3時のドルはじり高156円半ば、1週間半ぶり高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story