コラム

従来の対策では防ぎきれない...今後のサイバーセキュリティで「警戒」すべき5つのリスクとは

2023年12月12日(火)18時07分

クラウドシステム内にも脆弱性があり、不適切なアクセス制御、および弱い認証メカニズムは、機密データを不正アクセスにさらす。そうした脆弱性はサイバー犯罪者によって悪用されてクラウド環境への侵入を許し、保存されたデータの完全性と機密性を損なうこともある。

これらの課題に対処するために、企業や組織はクラウドセキュリティに関する包括的なアプローチが必要だ。システムの定期的な更新とパッチ適用、強固なアクセス制御と認証メカニズムの実装、定期的なセキュリティ監査の実施は不可欠である。また、クラウドセキュリティのベストプラクティスのためのユーザー教育も重要だ。

人材不足

最後は、人材不足だ。人材不足は切迫した課題のひとつで、サイバーセキュリティ分野には熟練したスキルのある専門家が圧倒的に不足している。企業や組織は、進化する攻撃者らによるサイバー脅威に対処して、デジタル資産を効果的に保護することに苦戦している。サイバーセキュリティの専門知識への需要は供給を上回り続け、多くのビジネスが攻撃に対して脆弱な状態にある。

人材ギャップを埋めるために、仮想セキュリティ最高責任者(vCISO)や、マネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)が注目されている。仮想CISOは専門的なコンサルティングサービスを提供し、企業が堅牢なサイバーセキュリティフレームワークを実装できるよう支援する。

一方、MSSPは脅威の検出やインシデント対応を含む包括的なセキュリティソリューションを提供し、社内のセキュリティ対策チームを効果的に補完できる。また現在では、組織は自動化ツールを活用してセキュリティ運用を効率化し、既存の人員への負担を軽減する対策も注目されている。

年々、複雑化するサイバー脅威によってもたらされる課題に対応する中で、このコラムのような最新の脅威と技術について情報を得ることも非常に大事だ。先見の明を持ち、堅牢なセキュリティ対策を実施し、ベストプラクティスを採用すること。それによって、私たちは機密データを効果的に保護し、顧客の信頼を維持することができる。私たちのデジタル資産を守ることは、自分たちの成功にとってのみならず、デジタルエコシステム全体のセキュリティと安定性にとっても不可欠なのである。

脅威インテリジェンスによって企業などのシステムにある潜在的な脆弱性(セキュリティ上の穴)を特定し、サイバー犯罪者に悪用される前に脅威インテリジェンスでそれらを軽減するETLM(External Threat Landscape Management=外部脅威情勢管理プラットフォーム)というコンセプトを推し進めている立場の私にとっても、2024年もまたサイバー攻撃のリスクとの戦いは終わらないのである。

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡船舶護衛、欧州の多くで慎重論 「われわ

ワールド

供給確保優先、ホルムズ海峡のイラン船舶通過「問題な

ワールド

米中首脳会談延期なら、イラン情勢が理由 貿易問題で

ワールド

イラン攻撃で3週間の作戦計画、イスラエル軍 レバノ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story