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元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで
もし友人たちも挑戦していたらどうだったろうと思います。友人の中には私よりも才能のある人たちがたくさんいました。自分たちにも短大以外の選択肢があると感じていたら、彼女たちは全く違った人生を送ることになっていたはずです。もちろん短大進学が間違っているわけではありませんし、現在の彼女たちを否定するつもりはありません。他の選択肢が今より幸せだったと断定するつもりもありません。ただ、十分な選択肢が与えられその中から選択できていただろうか、自分たちにはそんな価値はないと思わされていなかっただろうか、と思うのです。
その後私はアナウンサーになり、今年2月にはアメリカ・コロンビア大学で修士号を取得しました。4月からは東京大学に通っています。学部入学式では、上野千鶴子さんがスピーチし、大きな話題になりました。
「あなたたちが今日『がんばったら報われる』と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひとたちがいます。がんばる前から、『しょせんおまえなんか』『どうせわたしなんて』とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」
スピーチを聞きながら、かつての友人たちの顔が浮かびました。そして母の手書きの問題集を思いました。頑張るということは個人の行為ですが、頑張ることを可能にしていること、そして報われるというのは、個人を超えた周囲との関係性から成り立っていたのだと感じました。だとすると、東大に行く人と、行かない人にどんな差があるというのでしょうか。それはその人の努力とは別に、「運」にも大きく左右されているのではないかと思います。つまり環境が整えば誰にでも可能性があり、東大に入ったからといってその人自身が変わるものではないのです。
「赤門の前で、土下座して何かお願いしている人がいましたよ。日本では東大神話があるんですね」。同じゼミの中国人留学生の友人が驚いた様子で教えてくれました。さすがに赤門に土下座しても何も成就しないだろうと笑ってしまいましたが、考えてみると私も長く東大を神のような絶対的な存在と感じていました。東大生と聞けば、その人の如何に関わらず、別世界の人なのだと思っていました。
しかし実際に入学してみると、東大は決して完全無欠の存在ではなく、とても素朴で温かです。様々な巡り合わせで、様々な志を持った学生たちが集まっています。もしこのコラムが神格化された東大とのギャップを表現し、将来の受験生たちの選択肢を広げることに寄与できるとしたら、とても嬉しいです。
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