コラム

元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

2019年05月20日(月)16時40分
元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

Mizoula-iStock.

<上野千鶴子さんが東大入学式祝辞で、頑張る前から意欲をくじかれる人たちの存在に言及した。それを聞いて、かつての友人たちの顔が浮かんだ>

この私が、本当に、東大生になったのだろうか。発行されたばかりの学生証を見つめ、間違いでないことを何度も確認したのでした。そこには確かに「東京大学」と書かれており、その横に印刷されているのは私の顔写真です。今年の4月、私はオーラルヒストリーの研究をするために東京大学博士課程に入学しました。私が東大生になるなんて。子供の頃の自分に教えてあげたら、どんなに驚くだろうと思います。

「この子は落ちこぼれなので、このままでは不良になると思います」。そう担任の先生に告げられたのは、私が小学2年生の時。保護者面談でのことでした。そうか、私は落ちこぼれなんだ。子供だった私は、道理で勉強が分からないはずだと、さほどショックを受けた記憶はありません。でも母は違いました。私が落ちこぼれと言われたことよりも、不良になるということに動揺し、社会に迷惑をかけないようにしなくてはと感じたそうです。

それからは母が私の家庭教師になりました。母も勉強は苦手で、教えることは一苦労だったようです。問題集は母の手作りでしたが、ノートに手書きで書かれた問題には何度も書き直した跡が残っていました。母の懸命なサポートのお陰で、小学校高学年にはなんとか私も学校の勉強を理解できるようになったのでした。

でも不良になりました。中学・高校時代は堂々と校則違反し、ピアスと長いスカート姿で、校内で風を切っていました。ただ、落ちこぼれだからではなく、周りからの影響です。友達みんな同じような格好で、それ以外のおしゃれなんて知らなかったのです。

選択肢のなさはファッションだけでなく、進学についてもそうでした。中高の私の女友達は、多くが広島県内にある短期大学への進学を希望しました。もちろん短大以外の大学の存在は知っていましたが、自分たちには関係ないと思っていたのです。当然私も広島の短大に進むのだろうと思っていました。

ところが、私の父が東京に単身赴任することになり、東京の大学という遠かった存在が私にとって少し身近になりました。東京に行ってみたい。英語が好きだから外国に関係することを学びたい。そう思った私は東京の大学を闇雲に探し、東京外国語大学なら東京で外国のことを学べるに違いないと受験してみることにしたのでした。そんな私の決断を友人たちは「智子は違うけーね」と異物扱いし、私も「そんな実力ないよね」と記念受験であることを強調しました。結果は東京外国語大学だけでなく、そのほかの東京の私大も全て合格でした。

プロフィール

久保田智子

ジャーナリスト/東京大学博士課程在籍。広島・長崎や沖縄、アメリカをフィールドに、戦争の記憶について取材。2000年にTBSテレビに入社。アナウンサーとして「どうぶつ奇想天外!」「筑紫哲也のニュース23」「報道特集」などを担当。2013年からは報道局兼務となり、ニューヨーク特派員や政治部記者を経験。2017年にTBSテレビを退社後、2019年アメリカ・コロンビア大学にて修士号を取得。現在は東京大学学際情報学府博士課程に在籍。研究テーマはオーラルヒストリー。東京外国語大学欧米第一課程卒。横浜生まれ、広島育ち。
Twitter @tomokokubota

ニュース速報

ビジネス

ECB専務理事候補シュナーベル氏、緩和策批判はユー

ワールド

ロシア、OPECと目標共有 協調減産に協力=プーチ

ワールド

北朝鮮「米は敵対政策撤回を」、継続なら非核化協議再

ワールド

政敵捜査の「見返り」に首脳会談、トランプ氏「指示」

MAGAZINE

特集:プラスチック・クライシス

2019-11・26号(11/19発売)

便利さばかりを追い求める人類が排出してきたプラスチックごみの「復讐劇」が始まった

人気ランキング

  • 1

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たGSOMIA問題の本質

  • 2

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 3

    中国は「ウイグル人絶滅計画」やり放題。なぜ誰も止めないのか?

  • 4

    米韓、在韓米軍駐留費巡る協議わずか1時間で決裂 今…

  • 5

    表紙も偽物だった......韓国系アメリカ人高官が驚く…

  • 6

    野党の「桜を見る会」追及にはなぜ迫力がないのか

  • 7

    余命わずかな科学者が世界初の完全サイボーグに!?

  • 8

    香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っ…

  • 9

    ソルリの死を無駄にはしない 韓国に拡がる悪質コメ…

  • 10

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 1

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 2

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たGSOMIA問題の本質

  • 3

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

  • 4

    アメリカが繰り返し「ウソ」を指摘......文在寅直轄…

  • 5

    日本のノーベル賞受賞に思う、日本と韓国の教育の違い

  • 6

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

  • 7

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判…

  • 8

    中国は「ウイグル人絶滅計画」やり放題。なぜ誰も止…

  • 9

    香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っ…

  • 10

    「安い国」になった日本の現実は、日本人にとって幸…

  • 1

    マクドナルドのハロウィン飾りに私刑のモチーフ?

  • 2

    「アメリカは韓国の味方をしない」日韓対立で米高官が圧迫

  • 3

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 4

    意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の…

  • 5

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 6

    インドネシア、巨大ヘビから妻救出した夫、ブタ丸呑み…

  • 7

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請…

  • 8

    「武蔵小杉ざまあ」「ホームレス受け入れ拒否」に見る深…

  • 9

    アメリカが繰り返し「ウソ」を指摘......文在寅直轄…

  • 10

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!