コラム

犯行現場になりやすいのは...「闇バイト強盗」の原点、名古屋・闇サイト殺人事件から考える「犯罪機会論」

2025年08月07日(木)18時30分
住宅街

(写真はイメージです) yoshi0511-Shutterstock

<凶悪事件の犯行現場には共通項があると犯罪学者の筆者は述べる。襲うのは「誰でもよかった」のかもしれないが、「どこでもよかった」わけではない>

先月23日、「ルフィ」と名乗る男らがフィリピンを拠点に強盗を指示した事件で、犯罪組織の幹部に最初の判決が出た。実行役を集めた強盗致傷幇助罪などに問われた被告に対し、東京地裁は懲役20年を言い渡した。いわゆる闇バイトによる広域強盗事件として有名になった事件だが、その原点とも言えるのが、2007年8月に名古屋市千種区の31歳の女性が殺害された事件だ。

この事件では、被害者が帰宅途中、インターネット掲示板「闇の職業安定所」で知り合った男3人に拉致された上、現金を奪われて殺害された。「闇サイト」で知り合った男3人は、Eメールのやりとりを重ね、夜道を歩いていた被害者をミニバンで連れ去り、現金やキャッシュカードなどを奪って殺害した。3人が初めて顔を合わせて、わずか3日後の凶行だった。

インターネットが危険なのは、そこが「入りやすく見えにくい場所」だからだ。誰でも利用できて(=入りやすい場所)、しかも匿名で書き込みができる(=見えにくい場所)。そうした場所の危険性を早くから指摘しているのが「犯罪機会論」だ。

犯罪機会論では、犯罪の被害に遭わないために最も必要なことは、「人」ではなく、「場所」に注意することだと訴える。なぜなら、「危ない人」は見ただけでは分からないが、「危ない場所」は見ただけで分かるからだ。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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