コラム

犯行現場になりやすいのは...「闇バイト強盗」の原点、名古屋・闇サイト殺人事件から考える「犯罪機会論」

2025年08月07日(木)18時30分

「危ない人」の心の中は見えない。しかも、「危ない人」はできるだけ目立たないように振る舞う。そのため、これから犯罪を行う「人」を発見することは極めて困難だ。さらに、まだ犯罪を行っていない「人」を犯罪者扱いすることは人権侵害にあたる。要するに、「危ない人」を特定することは実際上難しく、倫理上許されないのだ。そのため、「不審者」という言葉を使っているのは、世界中で日本だけである。

対照的に、犯罪機会論は「人」には興味を示さない。問題にすべきは「場所」なのである。そして、多くの実験と調査によって、犯罪が起きやすい場所は「入りやすく見えにくい場所」であることが証明されている。

前述したように、インターネットは「入りやすく見えにくい場所」の典型だが、リアルな犯行現場も、もちろん、「入りやすく見えにくい場所」になるのがほとんどだ。つまり、身近な地域でも「危ない場所」は、誰もが入りやすく、誰からも見えにくい場所なのだ。ほとんどの犯罪は、この「入りやすく見えにくい場所」で起きている。言い換えれば、犯罪者は、犯行場所として、「入りやすく見えにくい場所」を選んでいるのだ。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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