9月の米雇用、民間データで停滞示唆 FRBは利下げ維持か

官民の複数の情報源から得た代替データによると、米国の雇用市場は9月も停滞しているとみられるが、雇用が低迷する中でも失業率に変化は見られないと考えられている。2022年4月、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Shannon Stapleton)
Lucia Mutikani Ann Saphir
[2日 ロイター] - 官民の複数の情報源から得た代替データによると、米国の雇用市場は9月も停滞しているとみられるが、雇用が低迷する中でも失業率に変化は見られないと考えられている。エコノミストは、これには移民労働者数の減少が大きく影響しているとみている。
政府閉鎖により数多くの政府経済指標の発表が遅れる中、 米シカゴ地区連銀が2日発表した新たな「リアルタイム」推計など代替指標が通常以上の注目を集めることになりそうだ。
シカゴ地区連銀によると、民間データと入手可能な政府データを合わせた9月の失業率推計値は4.3%と、8月から横ばいだった。懸念されていた失業率の急上昇がまだ始まっていないことを示している。
ただ、他のデータは労働市場の低迷が続いていることを示唆しており、米連邦準備理事会(FRB)は10月28─29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%ポイント引き下げる可能性が高い。
政府機関の一部閉鎖を受け、10月3日に予定されている雇用統計のほか、建設支出や貿易統計などの経済指標の発表が停止された。
ただ、政府機関の閉鎖期間次第ではあるものの、これらが次回FOMCまでには入手可能となる可能性はまだ残っている。
FRBの利下げ議論は、現在、政策担当者の見解に大きく左右されている。失業率が4.3%ならほぼ完全雇用水準にあると考えられており、労働市場がまずまず持ちこたえているのか、それとも急激な崩壊のリスクにさらされているのかという点だ。
米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は1日のラジオ番組で、労働統計局(BLS)の統計を含む主要経済指標の発表が遅れることになり、FRBの仕事は「さらに困難になる」と指摘。「最も良い数字はBLSの数字だが、それが手に入らない場合は、シカゴ連銀の数字や他の数字を使うことになる」と述べた。
税務・会計ソフトウエアを手がける米インテュイットが自社プラットフォームから抽出した中小企業約40万社を対象としたデータによると、従業員1─9人の企業では9月に4万8000人以上が解雇された。これは前年比約0.37%減少だった。この規模の企業では2024年初めから雇用が着実に減少しており、直近四半期の平均月間雇用者数はピーク時の1310万人から約40万人減少した。
一方、再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米国で9月に発表された人員削減数は前月比37%減の5万4064人だった。ただ、年初来の人員削減数は94万6426人と、2020年以降で最多となった。年初来の採用計画数は20万4939人と、2009年以来、16年ぶりの低水準を記録した。
エコノミストらは、トランプ大統領の貿易政策や移民政策、人工知能(AI)の台頭による不確実性が長引いており、これらが相まって需要と労働供給を減少させていると指摘する。
政府閉鎖が来週まで続けば、今後発表される予定の消費者物価指数(CPI)や小売売上高、住宅着工件数、生産者物価指数などのデータも公表されず、消費者を始め投資家や政策担当者の意思決定にも影響を及ぼすことになる。