コラム

次期英首相最有力、ボリス・ジョンソンは国をぶっ壊しかねない問題児

2019年06月19日(水)20時30分

2001年には、下院議員に当選。スペクテイター誌の編集長や新聞のコラムニストも兼任した。05年、再選。

ジョンソンと同時期に下院に初当選したキャメロンは、05年には保守党党首に就任して、出世街道を驀進していた。

下院議員としてはほとんど功績上げていなかったジョンソンは、自分なりの政治経歴を築くための活躍の場として、ロンドン市長選に目を向けた。ゆくゆくは首相の座を狙っていたが、この時はもしそんなことを言ったら、笑われるだけだったろう。

ロンドン市長として、実績を積む

2008年、保守党の支持を受けたジョンソンは、初代ロンドン市長ケン・リヴィングストンを破って、ロンドン市長選に当選。12年には再選し、この年の夏に開催されたロンドン五輪・パラリンピックの大成功を手柄とした。

筆者はこの時ロンドンにいたが、開催前「五輪には興味がない」という声が大きかったが、いざ蓋を開けてみると国民全体が五輪・パラリンピックを熱狂的に応援した。国民の人気者ジョンソンの元に一つにまとまった感じがあった。

ロンドン市内で自転車をシェアする「ボリス・バイク」の仕組みを実現させ、市内の公共交通機関でのアルコール飲酒の禁止のほかに、左派リベラル的な政策例えば物価が高いロンドン市内の最低時給制度の維持、非合法滞在の移民への恩赦のほかにLGBTの行進にも積極的に参加した。

キャメロンが2010年に初の首相(自由民主党との連立政権)に就任し、ジョンソンは先を越されてしまった。そこで、ロンドン市長になったことを機に議員を辞めていたが、2015年の下院選に出馬した。当選を達成し、保守党・党首そして首相就任への下地ができた。

離脱運動の立役者に

首相の座が手に届くところまで迫ったのは、2016年だ。

この年6月、EU加盟の是非をめぐる国民投票が行われたが、離脱キャンペーンを主導した一人がジョンソンだった。離脱を何年も前から主張してきた「英国独立党」のナイジェル・ファラージ党首(当時)は独自でキャンペーンを展開したが、離脱運動公認組織「ボート・リーブ」の中心なったのがジョンソンで、「英国を自分の手に取り戻そう」と国民に呼びかけた。

国民投票の結果が出て離脱が決定すると、残留派を主導したキャメロンは辞任表明。党首選が始まった。

この時も、最有力視されていたのはジョンソンだった。いよいよ、ジョンソンが立候補宣言をする日が訪れた。

boris190619_2.jpg

EUに支払う「3900億ポンドは私たちのものだ」と述べるボリス・ジョンソン議員の言葉を見出しにつけた、サンデー・タイムズ紙の1面(6月9日付)

しかし、候補宣言をするための重要な記者会見が始まる直前、党首選でジョンソンを支持すると確約していた、同じく離脱派のマイケル・ゴーブ司法相(当時)が自ら立候補宣言。党内の支持基盤が崩れたことで、ジョンソンは立候補をあきらめざるを得なくなった。腹心の同僚から裏切られるという劇的な展開だった。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点

ビジネス

AIブーム、崩壊ならどの企業にも影響=米アルファベ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story