コラム

難民・経済・医療の「三重苦」で内閣改造...英スターマー首相、支持率低迷のなかでの末期症状

2025年09月06日(土)15時53分

今年5月、レイナー氏はイングランド南部の高級住宅を80万ポンド(約1億5900万円)で購入した際、もともとの自宅持ち分の一部を障害のある息子のための信託に移しているとして印紙税(不動産取得税)を本来より約4万ポンド(約795万円)少なく納めていた。

未成年の子が受益者の信託は親がその不動産を保有しているとみなされ、新たな住宅は「2軒目」となり追加課税される。しかしレイナー氏は「自宅は1軒だけ」と過少納付していた。独立倫理顧問は「閣僚に求められる最高水準の適正行為を満たしていない」と判断した。

移民・難民問題は地元住民の生存・防衛本能に突き刺さる

イングランド南東部エセックス州で難民申請者の宿泊施設として使われているホテルの滞在者が14歳少女への性的暴行罪で起訴され、数千人に広がる住民の抗議運動に発展した。このような「難民ホテル」は200カ所を超え、約3万2000人が収容されている。

英仏海峡を渡る「ボート難民」は昨年、前年比25%増の3万7000人。今年上半期はさらに増えている。移民・難民問題は地元住民の生存本能、防衛本能に突き刺さる。冷静に判断し、バランスのとれた包括的な政策を実行に移すのが難しい課題だ。

感情的な判断は問題の根本的な解決にはつながらない。しかし改革英国党のナイジェル・ファラージ党首のようなポピュリストがつけ込むにはもってこいだ。欧州連合(EU)離脱が状況を悪化させたにもかかわらず、離脱を主導したファラージ氏に英国の有権者は救いを求める。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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