コラム

プーチンの「取り巻き」が見せる反逆の兆候...「独裁者」の足元が崩れ始めた

2022年03月05日(土)14時55分

「この戦争はロシアにとって最悪のシナリオだ。間違いなくプーチン氏の終わりが始まった」というマリーナさんだが、ロシア国内は西洋化したリベラルな若者とプーチン氏支持層の二つに分かれているという。

「西洋化され、海外旅行したり、いろいろな映画を観たりすることが好きな若い世代はウクライナで起きたことを理解している。そしてモスクワや他の都市で反戦デモに参加して拘束されている」

「しかしロシアの大半は違う。お年寄りはプーチン氏に洗脳されている。情報統制下に置かれ、ウクライナで起きている真実は何も見ることができない。ロシア人の多くはウクライナがロシアと戦争をしたがっていると信じている。プーチン氏のプロパガンダを信じている」

プーチン氏を支える特権層と貧困層

マリーナさんによると、プーチン氏の支持層は2つのカテゴリーに分けられる。一つがプーチン政権から利益を得ている富裕層。オリガルヒだけでなく、メディア関係者や一部のセレブリティがプーチン氏とつながり、何らかの利益を得ている。そしてもう一つが非常に貧しい人々だという。

「50代以上の人たちはソ連が崩壊した大変な時期をみんな覚えている。数年間は食べ物さえも十分ではなかった。犯罪も多発していた。それに比べると今は安定しているように見える。しかしそれはプーチン氏のおかげではなく原油・天然ガスの価格が上昇したからだ」

「今のような状態では国の発展はなく、未来もない。ウクライナ侵攻でモスクワや他の都市では生活がずっと悪くなっている。ロシアはすべての世界から完全に孤立していることが分かった」

プーチン氏は、ウクライナ侵攻に関する虚偽の情報を流したと判断すれば厳罰を下せるよう処罰を強化した。リベラルなメディアをオンラインから遮断し、ロシアが管理していないSNSへの国内からのアクセスを制限した。

「ロシア人は非常にクリエイティブで、どうすれば接続を復元し、見たいものを見られるようになるか、みんな工夫している。あんなに強くてパワフルで危険に見えたソ連が崩壊するとは誰も思わなかったが、アッという間に崩壊した」

「今のロシアはもっと強力で危険に見える。それはプーチン氏がそう見せることに成功しているからだ。しかし私たちはウクライナ情勢がプーチン氏の思うように進んでいないことを目の当たりにしている。普通の人々がプーチン政権をひっくり返すことは可能だと思う」とマリーナさんは話した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story