コラム

厳しい入場制限で市民団体を排除、COP26は史上最悪の密室交渉

2021年11月09日(火)11時55分
COP26のオバマ

オバマの登場でCOP26の会場は大いに沸いたが、会議の運営はCOP史上最悪とも(11月8日、英グラスゴー) Phil Noble-REUTERS

<コロナ感染対策で出席者を絞った結果か、市民団体は傍聴席から交渉過程を監視することもできないと訴える>

kimura20211109102801.jpg
バラク・オバマ元米大統領の参加で大混雑するCOP26の会場(筆者撮影)

[英北部スコットランド・グラスゴー発]英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で新型コロナウイルス感染症対策を理由に会議へのアクセスが大幅に制限された市民団体のメンバーから「これでは一般市民の目や耳となり、COPの正当性と交渉の透明性を確保する役割が果たせない」との批判が相次いでいる。

COP26も8日で閣僚級会合が始まる2週目に入った。世界から約120人の首脳が集まった世界リーダーズ・サミットが開かれた11月1、2の両日から環境、学術、先住民族、気候正義、女性、若者団体の代表者から「会議に入れない」「オンラインで視聴してと言われたが、つながらない」という不満が爆発。会議に入れず、カフェや廊下に追いやられた。

130カ国以上の1500以上の市民団体が参加する気候行動ネットワーク(CAN)はCOP26最初の「今日の化石賞」にCOP26議長国イギリスを選び、運営の改善を迫った。CANはコロナの世界的な流行(パンデミック)に直面している途上国のメンバーが参加できないことを懸念してCOP26の再延期を要請していた。

ワクチン接種の大幅な遅れ、渡航ルールの変更、高額な渡航費などを理由に、通常ならCOPにメンバーを派遣する市民団体の約3分の2がグラスゴーへの渡航を見送ったと英紙ガーディアンが報じている。

「温暖化対策に一刻の猶予も許されない」と再延期要請を拒否

COP26はもともと昨年開催される予定だったが、パンデミックで約1年延期された。CANなど市民社会の再延期要請に対してアロック・シャルマCOP26議長は「地球温暖化対策に一刻の猶予も許されない」と開催を決断し、開催地のスコットランド自治政府と協力して「誰も取り残さない最も包摂的なCOPにする」と国際社会を迎え入れる準備を進めてきた。

kimura20211109102802.jpg
新型コロナウイルスの迅速検査キット。ラインが1本なら陰性だ(同)

毎日、15分で陽性か陰性かが分かる迅速検査を自分で実施してオンラインで結果を入力。電子メールや携帯電話のテキストメッセージで送られてきた陰性判定と参加者バッジを警備員に示さないと会場の中には入ることができない。屋内では感染防止のためのマスク着用と社会的距離が義務付けられ、トイレを使用するとスタッフがすぐに飛んできて消毒する。

kimura20211109102803.jpg
携帯電話に送られてくる陰性判定のメッセージ(同)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州各国が新たなドル資金融通の枠組み議論、FRB依

ワールド

ロシア、ガザ巡り独自の国連決議案提示 米国案に対抗

ビジネス

ネクスペリア問題、顧客が応急策検討 欧州・中国事業

ビジネス

マクロスコープ:LINEヤフーの憂鬱、AI検索普及
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story