コラム

コロナワクチン接種、イギリスでは59歳の筆者にも回ってきた!その現実

2021年02月12日(金)10時24分

筆者が打ってもらったアストラゼネカ製ワクチン Gareth Fuller/REUTERS

[ロンドン発]新型コロナウイルスの集団予防接種が進むイギリスで60歳の誕生日を迎えたばかりの妻と59歳の筆者にもワクチン接種の順番が予想以上に早く回ってきた。場所はかかりつけ医(GP)診療所。接種者は50~60歳代が中心で、すでに70歳以上の接種がほぼ終了していることを実感させられた。

kimuraface.jpg
新型コロナワクチンを接種してもらう筆者(妻が撮影)

同国では1回目のワクチン接種は1350万人に行われ、このうち2回目も終了したのは52万人。妻は10年前、乳がんで両乳房全摘・再建手術と抗がん治療を受けている。自宅が診療所まで徒歩3分と近いことから今月3日にキャンセルの穴を埋める緊急オファーが妻の携帯電話にテキストで送られてきた。

すぐに診療所に電話で10回近く折り返したもののずっと話し中で、ようやくつながった時には7人待ち。結局、この時はすぐに空きがなくなり、接種は受けられなかった。その代わり、夫婦一緒に接種してもらえるようお願いしておいた。9日にも妻の携帯電話が鳴ったが、すぐに出られなかった。

当日は朝から緊張、そわそわ

すると今度は筆者の携帯電話が鳴って「夫婦2人でコロナの予防接種を受けますか。受けるなら11日午後3時に診療所で」と打診があり、「イエス! ツゥー・イエス」と即答した。11日は朝からそわそわして落ち着かなかった。シャワーを浴びたり、ワクチンを接種しやすいよう2人でTシャツを着たり......。

副反応が出ても影響がないよう11日以降の予定は空けておいた。死者が11万5500人を超えるイギリスではリスクよりベネフィットの方が大きいと頭では分かっていても、やはり緊張は隠せない。スクリーニングとインフォームド・コンセント(説明と同意)は取材で聞いていたよりはるかに簡単だった。

接種は利き腕でない左腕にしてもらったが、注射が大の苦手な筆者には少し痛かった。妻や友人は「全然、痛くなかった」という。夫婦で射ってもらったのは、英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが開発・製造したワクチンだった。

アストラゼネカ製ワクチンは高齢者への有効性が証明されていないとして欧州連合(EU)加盟国から次々と敬遠され、南アフリカからは同国内で蔓延する変異株の有効性が著しく低下するとして接種を中止された。イギリスでの接種間隔も12週間から「4~5週間に短縮される」(かかりつけ医)という。

アストラゼネカ製ワクチンはイギリス国内でだぶついているのだろうかと勘ぐらせた。接種したその日の個人的な印象は「インフルエンザワクチンと同じようなもの」だった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story