コラム

コロナワクチン接種、イギリスでは59歳の筆者にも回ってきた!その現実

2021年02月12日(金)10時24分

先進7カ国(G7)中で唯一、接種が始まっていない日本。米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したmRNAワクチンについて、厚生労働省は12日、薬事・食品衛生審議会の部会を開き、緊急使用を妥当と判断する見通しだ。15日に正式承認し、国立病院機構などの医師や看護師から接種を始める。

世界ではアメリカ、中国、EU、イギリスでワクチンの集団予防接種が急ピッチで進められている。11日現在、世界全体で1億5149万回分の接種が行われた。100人当たりの接種回数では中東のイスラエル69.46回やアラブ首長国連邦(UAE)47.37回が先行している。

英誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの報告書は「ワクチン忌避は一部の先進国におけるワクチン展開に大きな影響を与える恐れがある。 フランスと日本は最近の世論調査では人口の約半数が接種を望んでいない」と指摘。その一方で「大きな問題なく接種が広がれば、この傾向は変わるかもしれない」と分析する。

prediction.jpg

感染者数は激減

今年後半にはアメリカ、EU、イギリスで広範囲のワクチン接種が終了するが、日本は来年半ばにずれ込む。世界全体では23年以降まで接種が続いている。現在のワクチンを回避する南アフリカ・ブラジル変異株が出現していることを鑑みると、東京五輪・パラリンピックの開催がいかに難しいかが一目瞭然になる。

100人当たりの接種回数で世界一を走るイスラエル。射ったのはファイザー製ワクチンで、2回目の接種を受けた約75万人のうちコロナに感染したのは60歳以上の531人(0.07%)、入院を要したのは38人(0.005%)に過ぎなかった。

他の研究でも2回の接種を終えた16万3千人のうち感染したのは31人、ワクチンを接種していない対照群では6500人近くに達した。有効性はファイザーが公式に発表した95%に近い92%で、mRNAテクノロジーを使ったファイザー製ワクチンの有効性が極めて高いことが改めて実証された。

では安全性はどうなのか。ノルウェー政府の発表(1月19日)によると、ファイザー製ワクチンを巡って同国で介護施設や在宅介護の高齢者23人が接種から1週間以内に死亡した。

介護施設では毎週平均して約300人が死亡しているため、同国保健相は「介護施設の入所者のほとんどは、深刻な基礎疾患を抱えているか、人生の最終段階にある。報告された死亡者は高齢者、非常に虚弱な患者、終末期の老人ホーム居住者だ。これはワクチンの安全性を懸念する原因にはならない」と語る。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満症治療薬値下げの詳細、トランプ氏と製薬大手2

ビジネス

FRB、現時点でインフレ抑制に利上げ必要ない=クリ

ビジネス

テスラ株主、マスク氏への8780億ドル報酬計画承認

ワールド

スウェーデンの主要空港、ドローン目撃受け一時閉鎖
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story