コラム

イギリス3度目のロックダウン、変異株の猛威が浮き彫りに

2021年01月05日(火)11時00分

1月4日、3度目のロックダウンを発表するジョンソン首相をテレビで見る女性(英ミルトンケインズ) Andrew Boyers-REUTERS

[ロンドン発]感染力が通常株より最大7割も強い新型コロナウイルスの変異株が猛威をふるうイギリスのボリス・ジョンソン首相は4日夜のテレビ演説で驚異レベルが最も高い「レベル5」を宣言し、イングランド全土で学校閉鎖を含む3度目の都市封鎖(ロックダウン)に入ると告げた。

kimuralevel210105.jpg

イギリスは欧州連合(EU)離脱とコロナ危機で四分五裂状態になっているが、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドも都市封鎖に入った。クリスマスや新年のお祝いで政府のガイダンスに従わず家族や友人とこっそり集まっていた反動が出た可能性もあるが、変異株の猛威が改めて浮き彫りになった格好だ。

kimurakansen210105.jpg

ジョンソン首相は変異株について「私たちの科学者はこの新しい変異株の感染率が(通常株より)50〜70%高いことを確認した。ウイルスに感染する恐れがはるかに強くなった」と指摘。コロナによる入院患者がイングランドだけで先週、3分の1近く増え2万7千人に達し、昨年4月の最悪期に比べ40%も多くなった。

kimurakanja210105.jpg

死者も20%増加した。ジョンソン首相は「行動を起こさなければ3週間以内に国民医療サービス(NHS)がコロナに圧倒される。これからの数週間は最も過酷な状況に置かれる。私たちは本当に戦いの最終段階に入った。科学の奇跡のおかげで出口は見えており、そこに到達する方法を知っている」と呼びかけた。

外出は原則禁止

そして「政府はあなたに家にいるよう再び指示を出す。外出できるのは生活に不可欠な買い物、リモートに絶対に切り替えられない仕事、運動、コロナ検査を受けるなど医療上の要請、家庭内暴力からの脱出など、法律で許可される理由に限られる」と釘を刺した。

都市封鎖のルールは葬儀30人まで、結婚式6人まで。スーパーマーケットや生活に不可欠な店やサービスは開業でき、飲食店は持ち帰り、宅配、ドライブスルーのみ。プロスポーツの試合は無観客で継続される。罰金は200~6400ポンド(2万8千~89万5400円)。

違法パーティーなど30人超の集会に関わった場合、1万ポンド(約140万円)の罰金が科せられる。

ロンドンのNHS病院関係者は筆者にこう打ち明ける。

「コロナ入院患者が増え、昨年春の最悪期の5割増しになった。酸素の需要が120%に達し、救急車の受け入れを停止する非常事態を宣言した。入院患者の年齢も下がり、重症例が増えている。入院から死亡までの期間が短くなった。2週間後にピークが来るとみられており、これから勝負の2週間を迎える」

4日に再開したばかりの小学校や中等学校、大学は5日から全面的にオンライン授業に切り替えられる。支援が必要な児童、警察・消防・医療などエッセンシャルワーカーを親に持つ子供は例外だ。介護施設の職員、医療従事者、ソーシャルワーカー、70歳以上への1回目接種が終わる2月中旬以降の再開を目指す。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story