コラム

韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策

2021年09月10日(金)12時28分
李洛淵

与党「共に民主党」の李洛淵(2018年) Zoubeir Souissi-REUTERS

<反日・親北の李在明氏、知日・親北の李洛淵氏、対日協力と対北強硬姿勢の尹錫悦氏>

来年3月に行われる韓国大統領選をめぐり、進歩(革新)系与党「共に民主党」と保守系最大野党「国民の力」が候補者を絞り出す予備選挙を始める等、11月上旬の候補選出に向けた争いが本格的に始まった。与野党の候補者の中でも最も注目されているのが与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン、以下、李洛淵氏)前代表と、同じ与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、以下、李在明氏)京畿道知事、そして、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル、以下、尹錫悦氏)前検察総長の3人である。

大統領選挙の雰囲気が熱くなると、特に対日政策と対北朝鮮政策が注目される。その理由は対日政策と対北朝鮮政策が選挙結果を大きく左右する要因になるからである。

例えば、朴正熙政権(大統領任期:1963年12月17日 - 1979年10月26日)、全斗煥政権(同 1980年8月27日 - 1988年2月24日)、盧泰愚政権(1988年2月25日 - 1993年2月25日)時代には北朝鮮に対する反共主義が「万能薬」のように使われた。

大統領選の行方を左右

しかしながら、金泳三(同1993年2月25日 - 1998年2月25日)政権時代の1995年10月の村山富市総理発言(「日韓合併条約は当時の国際関係等歴史的観点から法的に有効に締結したものだと認識している」)や江藤隆美総務庁長官発言(「日本は植民地時代に韓国に良いこともやった」)、1996年2月の池田行彦外務大臣の竹島(韓国名・独島)領有権主張(韓国政府が発表した竹島での接岸施設建設計画発表に対し「竹島は日本固有の領土」であると抗議、建設中止を求めた)以降、韓国国内で反日感情が高まると、金泳三政権は世論を意識して反日姿勢を強化する等、日韓関係は政権の維持や獲得において重要な手段として使われることになった。

さらに、初めて国民の選挙により政権交代が実現された金大中政権(同 1998年2月25日 - 2003年2月25日)以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった。金大中政権、盧武鉉政権(同 2003年2月25日 - 2008年2月25日)が「太陽政策」など親北路線を強化したからだ。但し、北朝鮮に対する反共主義は過去に比べて影響力は弱まったものの、南北が分断されており、徴兵制度が残っている韓国においては相変わらず重要な選挙手段の一つとして使われている。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

逮捕475人で大半が韓国籍、米で建設中の現代自工場

ワールド

FRB議長候補、ハセット・ウォーシュ・ウォーラーの

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    ハイカーグループに向かってクマ猛ダッシュ、砂塵舞…
  • 9
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 10
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story