コラム

不利な投資のはずの「金」がこれほど買われる理由の裏に、投資家が恐れる長期的リスク

2023年04月20日(木)18時10分

確かにここ半年で金価格は顕著に上昇したが、実は2018年以降、価格は基本的に上がり続けており、見方によっては、金価格は長期的な上昇トレンドを描いていると解釈することもできる。長期的に金価格が上昇する理由はインフレしかないのだとすると、市場は長期的なインフレを強く懸念していることになる。

アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)は、複数の銀行破綻を受けて金融引き締めを一時、中断せざるを得ない状況に陥っている。リーマン・ショック以降、実施してきた大規模緩和策の影響で、市場には大量のマネーが供給されており、ここで引き締めを中断すると、滞留したマネーがインフレとして顕在化する可能性が否定できない。

金の価格上昇が深刻なインフレ懸念なのだとすると、ドルに対してさらに価値を下げている日本円にとってこれほどやっかいな事態はない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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