焦点:トルコのエルドアン大統領、ガザ停戦合意仲介で示した存在感

10月21日、かつて米政府の負担になっていたトルコとイスラム組織ハマスとの関係が、地政学的な資産へと変化した。写真は9月、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談するトルコのエルドアン大統領(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
Samia Nakhoul Tuvan Gumrukcu Ece Toksabay
[アンカラ/ドバイ 21日 ロイター] - かつて米政府の負担になっていたトルコとイスラム組織ハマスとの関係が、地政学的な資産へと変化した。トルコはハマスを説得し、トランプ米大統領のパレスチナ自治区ガザ停戦合意案を受け入れさせた成果により、中東というチェス盤における存在感を再確認し、イスラエルやアラブのライバル国をうろたえさせた。
ハマス指導部は当初、イスラエルの人質を解放しなければ攻撃を続けるというトランプ氏の最後通告に抵抗していたが、政治的な後援国とみなすトルコの説得により、ようやく折れた。
地域情報筋2人とハマス幹部2人はロイターに対し、トルコのメッセージは「合意を受け入れる時が来た」という明確なものだったと語った。
停戦合意後の先週、トランプ氏はトルコのエルドアン大統領について「トルコという国から来たこの紳士は、世界で最も強力な人物の一人だ」と称えた。「彼は信頼できる仲間だ。私が彼を必要とするときには、いつもそこにいてくれる」
停戦合意の文書にエルドアン氏が署名したことで、中東において中心的な役割を獲得しようとするトルコの動きに拍車がかかった。
関係者によれば、トルコは今、米国との二国間問題を含めて今回の成果を享受しようとしている。
イスタンブールに拠点を置くシンクタンクEDAMのディレクターで、カーネギー欧州の上級研究員でもあるシナン・ウルゲン氏は、トルコはハマスにガザ合意を受け入れさせるのに成功したことで、国内外で新たな外交的影響力を手に入れたと説明。トルコは米国との関係修復に乗じ、米最新鋭ステルス戦闘機F35のトルコへの売却、制裁緩和、そして隣国シリアにおけるトルコの安全保障目標達成に向けた米国の支援を求めていく可能性が高いと述べた。
<始まりはトランプ・エルドアン会談>
当局者らによると、トルコと米国の外交関係修復は、エルドアン氏が6年ぶりにホワイトハウスを訪れた9月に始まった。
会談では、トルコがロシア製地対空ミサイルS400を導入したことに対して米国が2020年に科した制裁の解除など、未解決の対立点を巡って協議が行われた。この購入は米国がF35開発計画からトルコを排除することにもつながった。
トルコは長年、イスラエル・パレスチナ紛争解決に向けた高レベルの取り組みに参加してこなかった。しかしトランプ氏はガザ停戦協議の膠着を打開するため、エルドアン氏に話を持ちかけた。エルドアン氏がハマスに及ぼす影響力に賭けたのだ。
エルドアン氏を巻き込むことで、トランプ氏はトルコが渇望していたイスラム教スンニ派の主導国としての役割を同国に託した。この動きは、エルドアン氏のイスラム主義的野心を長年警戒してきたイスラエルの他、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などのアラブ諸国を不安にさせたと外交官2人は語る。
アラブ政治評論家、アイマン・アブデル・ヌール氏は「エルドアン氏は影響力を拡大し、機会を捉え、出来事に便乗し、その功績を独占する達人だ。湾岸諸国はトルコがガザ問題で主導的役割を担うことに明らかに不満だったが、同時にこの紛争の終結、合意、そしてハマスの排除を望んでもいた」と述べた。
レバノンのアナリスト、サルキス・ナウム氏は、アラブ諸国は戦争を終結させたいという点でトルコと利害が一致していたものの、トルコが大きな役割を担ったことは、オスマン帝国が地域の多くの国々を支配した歴史を想起させ、懸念を誘うと説明した。