コラム

これだけ経済が苦しいのに、2108億円も税金をムダ遣いしていていいのか

2021年11月17日(水)19時00分
接触確認アプリCOCOA

NAOKI MORITA/AFLO

<アベノマスクの保管費用やCOCOAの修理費などに加え、各種の補助金や支援金も意味のない使われ方をしているため、無駄遣いの額は膨大となっている>

政府支出に対する厳しい指摘が相次いでいる。各種の補助金や支援金は政権にとって政治力の源泉であり、各省の省益でもあった。だが日本経済の貧困化に伴い、社会保障など国民生活の基盤となる支出にも事欠く状況となっている。補助金を大量にバラまく余裕はないという現実について、もっと共有していく必要があるだろう。

会計検査院が11月5日に内閣に送付した2020年度決算検査報告によると、同年度において「税金の無駄遣い」などの指摘があった件数は210件で、金額は2108億円に上った。指摘された事案の中には、新型コロナウイルス対策として政府が全世帯に配ったいわゆる「アベノマスク」が約8200万枚余っており、保管費用として6億円かかっているというものや、不具合が相次いだ新型コロナウイルス対策用接触確認アプリ「COCOA」(写真)のずさんな修理費などが含まれている。

財務省の有識者会議である財政制度等審議会においても似たような指摘が行われた。経済産業省が中小企業の生産性向上を目的に実施している「ものづくり補助金」において、補助金が特定の事業者に繰り返し支払われていた。

直近3年では、採択事業者のうち15%が過去にも同じ補助金を受け取った実績があるという。この補助金は生産性を向上させるためのものなので、繰り返し補助金を受け取ったということは、生産性が向上しなかった可能性が高いと言わざるを得ない。実際、同補助金の効果を学術的に検証したケースにおいても、補助金によって付加価値や生産性が有意に高まったという事実は見いだせなかった。

もはや無駄を許す余裕はない

各種補助金は政権にとって極めて重要な政治ツールであり、各省にとっても一連の利権を調整することで政治力を発揮できるという効果がある。補助金の中には特権化し、特定の事業者が長年にわたって受け取るケースも少なくないが、平成の時代までは予算をふんだんに確保できたことから、多少の無駄についても許容されてきた面があった。だが令和の時代に入り状況は大きく変わったといってよい。

日本経済の体力低下が目に見えて明らかとなり、財源不足が深刻になってきた。医療や年金、介護、生活保護など社会保障関連の支出が増大しており、財政を圧迫している。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、FOMCを控え持ち高調整

ワールド

貿易収支、8月は2425億円の赤字 対米輸出が13

ワールド

米政府、PURLに基づく初のウクライナ向け武器支援

ワールド

ブラジル前大統領、体調不良で病院搬送 息子が発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが.…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story