コラム

新しいグローバルスタンダードを身につけないと令和の時代は生き延びられない

2019年05月08日(水)15時00分

③会話や挨拶

人に会ったら笑顔で挨拶し、相手と話す時はしっかり目を見て会話する。そして会話はできるだけ汎用的な単語を使って論理的に行うのが新しいマナーである。異なる文化圏の人が接する場では「挨拶するかどうかは問題ではない。気持ちの問題だ」といった相手に対して忖度や理解を求める考え方は通用しない。

先日、日本人ビジネスパーソンが会議中に目をつぶっているのが奇妙だというコラムを目にしたが、この話はまさに典型例である。本人がどういうつもりであろうが、相手が一生懸命、話をしている時に、腕組みをして目をつぶるという行為は、相手に対して誠意を示していないという意味になるのは万国共通である(日本でも上司から説教されている時にこうした態度を取る人はいないだろう)。

④フラットな人間関係

男女平等や会話の進め方にもつながってくる話だが、周囲に誇示するかのような絶対的な上下関係は作らないというのが共通認識である。これは上司と部下、発注者と顧客など、あらゆる関係に適用される。上司の命令が絶対というルールは、日本よりもむしろ諸外国の方が厳しいが、それは上司に対して媚びるような態度を部下に求めることとは違う。役職者というのは人格的にエラいのではなく、機能として命令権限を持っているとの割り切りが必要である。

⑤交通インフラ

日本では規制によってサービスが制限されているが、ウーバーに代表されるライドシェアは、もはやこのサービスなしでの移動は考えられないほど世界に普及している。言葉も分からない見ず知らずの土地で、まったく同じ感覚でクルマを利用できる便利さと安心感は一度体験すると元には戻れない。規制の是非については賛否両論があるが、基本的にライドシェアは都市部における交通インフラの基本になるという認識を持っておいた方がよい。

⑥食事

それぞれの国には、それぞれの食文化があるが、近年は地域のテイストを生かしつつも、世界共通の食事のスタイルというものが定着しつつある。メニューの構成や見せ方、価格体系も似たようなものとなっており、そのパターンに慣れてしまえば、どこに行っても大きく迷うことはない。国内でもこうしたスタンダードに準拠したメニューにしておかないと、インバウンド需要をうまく取り込めないだろう。

⑦宿泊

ネットを使った予約サイトが全世界的に普及したことで、宿泊施設の価格体系やサービス内容もかなりのレベルで統一されるにようになってきた。米国のホテルでも台湾の民宿でも、ネットで予約できるところは、価格によるサービス・レベルの違いはあるにせよ、利用方法についてとまどうことはなくなっている。

観光庁によると、日本の一部の旅館が、価格体系や食事、チェックイン・チェックアウトなどの諸ルールがこうした世界標準に対応できず、インバウンドのビジネスチャンスを失っているという。非常にもったいないことだ。

⑧通信

日本では携帯端末とサービスが基本的にセットになっているが、諸外国では端末とサービスは分離している。外国に行く時には、現地でプリペイドSIMを購入して、自分のスマホに入れて使うというのはごく当たり前だが、日本ではごく一部を除いて、プリペイドSIMを自由に買うことはできない。犯罪に使われる可能性があるという意見もあるようだが、日本はそんなに犯罪大国なのだろうか。

総務省が是正に乗り出したこともあり、日本でも端末とサービスの分離が進むことになったが、SIM関連商品の柔軟性はまだまだ低い。街中でWiFiを使える場所が少ないのも日本特有である。自分が逆の立場(海外に行って、SIMも手に入らず、WiFiも使えない)だったから、かなり不便だろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀、25年度GDPを小幅上方修正の可能性 関税影

ビジネス

日経平均は大幅反発、初の4万9000円 政局不透明

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「

ワールド

ゼレンスキー氏、パトリオット・システム25基購入契
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story