コラム

トランプ肝いりの「ステーブルコイン」でドル急落?

2025年07月01日(火)15時00分

本来ならこうしたことはFRB(連邦準備理事会)がやるべきで、そうでなければ「デジタル人民元」ができた時に(簡単にはできないが)ドルは覇権を失うだろう。そしてこの、「ドルで担保」のSCは何やらうさんくさい。大体ドル自体、何も価値を保証するものがない半分仮想通貨のようなもの。そしてSC発行の最大手テザー(これまでに約1100億ドルを発行)は英領ヴァージン諸島に拠点を置き、米金融当局の監査には服しない。

英「南海泡沫事件」との類似性

それ故、SCはユーロダラーみたいになり得る。ユーロダラーとは米金融当局の管理に服さない領域で取引されているドルのことで、総額10兆ドルを超え、毎日1500億ドル程度の取引が行われている。2000年代、このユーロダラーを借りてアメリカのジャンクボンド(いわゆるサブプライム)に投資していた欧州の大手金融機関が、サブプライムの価値急落でユーロダラー債務を返済できなくなった。これがリーマン金融危機をグローバルに波及させ、かつグローバルなドル不足を呼んだ張本人だ。


それでも、SCは米国債の買い手を増やす。それでアメリカの財政をこれからも持たせることができる、と期待する者もいる。しかし、米国債発行額の大部分は中長期債が占め、こちらの消化は振るわない。長期金利は上昇気味で、国債利払い額が政府の負担能力を超えかねない。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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