いきり立つ「台湾有事」に盲点あり
つまり、台湾の半導体産業の対米ポジションは強い。TSMCの顧客の半分以上がアメリカだから、中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)との関係を切れとか、米国内で工場を建設しろなどの要求には従うふりをしているが、その「ふり」をやめるとき、アメリカはなすすべがないだろう。いつか台湾企業が米中双方に対して同等のビジネスを展開しますと宣言すれば、アメリカはのむしかない。
いま中国経済は不動産市場が冷え込むなど、これまでの成長を支えたエンジンが壊れつつある。もし中国経済が沈下して、中国の立場も弱くなると、台湾は自分の提示する条件で中国との提携を強めることさえ可能になるかもしれない。
90年代後半の中台関係はまさにそうだった。そのときに日米が「台湾の自由を守れ」と叫んでも、台湾人はピンとこないだろう。
だから、「台湾有事」をネタに防衛予算を強化するのは不要な装備を増やすだけで、ゆがんだ結果を生む。日本の防衛力強化は絶対に必要だが、予算は宇宙配備のミサイル防衛網やAI兵器、サイバー技術の開発など、日本自身の抵抗能力と技術力の強化に向けるべきだ。

アマゾンに飛びます
2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
人口減少の日本が取り入れたい、デンマーク式「財団企業」の賢い経営 2025.06.14
アメリカが経済協力から撤退した今、日本が世界のODAで旗を振れ 2025.05.27
米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉カードに使えばいい 2025.05.13
安倍元首相ならトランプに助け舟を出す...正反対な石破首相はどうすべきか 2025.05.02
ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年の恨み」の正体 2025.05.01
日本史上初めての中国人の大量移住が始まる 2025.04.26
グリーンランドを地上げするトランプ、その真意は? 2025.04.08