コラム

米中去って日本の出番、今年の好機は東南アジアにあり

2019年01月19日(土)15時00分

他方、日本は米中両国がASEANから退く分の穴埋めを求められる。こうなると日本はすぐ舞い上がりがちだが「分」を心得て、オーストラリアや韓国とも力を合わせて東南アジア諸国と互恵の協力を進めるべきだ。

オーストラリアと韓国のGDPはそれぞれロシアに匹敵する。オーストラリアは今年、世界一の液化天然ガス輸出国になる。韓国のハイテク企業サムスンはベトナム工場で自社スマホの3割を組み立て、ベトナムの対外輸出の2割を占めている。

今年、東南アジアではいくつか潮目になるイベントがある。タイで2月に予定されていた総選挙が延期されようとしている。軍事政権、野心的な国王、そして政権復帰を狙うタクシン元首相勢力がもつれ、軍部の分裂と衝突など思わぬ波乱が起きる可能性もある。

4月のインドネシア大統領選挙も、利権や宗教問題が絡んだ不安定要因となる。マレーシアではマハティール首相が94歳、ミャンマーではアウンサンスーチー国家顧問が74歳を迎えるなか、後継問題が生じかねない。

日本の東南アジア外交は今年、大きな転機を迎えそうだ。

<本誌2019年01月22日号掲載>

※2019年1月22日号(1月15日発売)は「2大レポート:遺伝子最前線」特集。クリスパーによる遺伝子編集はどこまで進んでいるのか、医学を変えるアフリカのゲノム解析とは何か。ほかにも、中国「デザイナーベビー」問題から、クリスパー開発者独占インタビュー、人間の身体能力や自閉症治療などゲノム研究の最新7事例まで――。病気を治し、超人を生む「神の技術」の最前線をレポートする。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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