コラム

トラス英首相を新たな「鉄の女」とか言うのはどうなの?

2022年09月16日(金)16時35分

それに比べ、トラスはEU「残留派」だったが2016年の国民投票の結果を受けて「離脱」容認に転向したことがよく知られている。理性的な行動だが、サッチャー的一貫性からは程遠い。

保守党党首選においては、トラスは保守党員の支持を得るために何度か立ち位置を変えたように見える場面もあった。繰り返すが、これは政治的に分別ある行動だったかもしれないが、サッチャーだったら最初の主張を曲げず、誰であれそれに反対する人が折れざるをえないように持っていったことだろう。

トラスについて興味を引かれるもう1つの点は、過去に不倫騒動があったがそれが政治家としてのキャリアの妨げになっていないように見えることだ。もう15年も前の、そう長続きはしなかった出来事で、結婚も破綻しなかったから、おそらく人々はどちらかといえば「一時の過ち」的に捉えている。

それでも僕は、夫を裏切った女性は、あたかも妻を裏切った男性よりも罪が大きいかのように、正義面した監視の目にさらされるんじゃないかと予想したが、そうはならなかった。だからある意味トラスは、女性政治家としての先駆者と言えるだろう。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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