コラム

都知事選は不出馬――堀江貴文に漂う「小池っぽさ」の末路

2020年07月07日(火)18時45分
都知事選は不出馬――堀江貴文に漂う「小池っぽさ」の末路

今回の「ダメ本」 Newsweek Japan

<堀江が本気で東京都を改造したいのならば、都知事選で小池の対抗馬としていち早く出馬すべきだった。『東京改造計画』は結局、理想を語っただけ?>

今回のダメ本

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『東京改造計画』
堀江貴文著
幻冬舎

堀江貴文はもはや政治家になる以外に道はない。少なくとも、本気で東京都を改造したいのならば、7月の都知事選挙で現職・小池百合子に挑むという道以外はない。

本書を読み終えての感想は実のところ、これしかなかった。提言については同意できる点はある。差し当たり、いくつか列挙してみよう。

堀江が主張するように、新型コロナウイルス問題は長期化するだろう。ゼロリスクはあり得ない。ならば科学的根拠に基づきハイリスクな層から対策を徹底し、経済を稼働させていく必要がある。なるほど、ごもっとも。

「科学的知見に基づいて、正しい政策を実行できるリーダーが必要だ」。ごもっとも。小池が採ったようなやり方ではなく、「過剰な自粛は今すぐやめて、経済を再開せよ」。ごもっとも。「政治家が責任をもってルールを変えなければ、人々の生活は何も変わらない」。ごもっとも。

さて、では誰がリーダーとなって、彼がぶち上げた改革案について責任を持って実行すべきなのだろうか。ここまで提言した以上、堀江本人以外はあり得ない。

噂話レベルで、堀江が都知事選に出るという記事がいくつか出たが、本人は立候補を見送り、秘書が出馬した。ここまで書いておいて出馬を見送るのならば、それだけで本気度に疑問符が付く。仮に直前に出馬したとしても、私には堀江が2000年代に入ってから日本政治に流れる「悪い潮流」に乗っているだけにしか見えなかった。

悪い潮流とは何か。何かにつけて改革を掲げ、インパクトと勢い任せで、短期間のうちに話題を振りまき、「風」を吹かせ、浮動票を狙うという例のやり方である。

少なくとも私たちは、小池が「風」を味方に付けて主導権を握った4年前の都知事選、「風」頼みが失敗に終わった3年前の「希望の党」騒動という、あまりにも醜悪な政治劇を見せつけられたばかりだ。

風頼みのやり方は、成功してもせいぜい1回止まりだ。2度も同じ方法は取れず、持続可能性も低い。

コロナ禍で小池に対する期待がそこそこにとどまり、一方で大阪府知事の吉村洋文に彼女をはるかにしのぐ注目が集まっているのは、良くも悪くも維新という政党が、大阪の中で一定の支持を集め続け、それに応えてきたという実績があるからだ。維新は既に風頼みの政党ではない。

堀江が本気で東京を改造したいと思っているのならば、彼はいち早く小池の対抗馬として名乗りを上げるべきだった。そして、幅広い都民に訴え、各政党や都議ら地方議員との対話にも乗り出し、自身の味方を見つけることが先だった。

ばかにはできない志があることは読んで分かったが、出馬をしないのならば、本書自体が理想を語るだけの中途半端なもので終わり、出馬しても風頼みのいつか見た選挙手法をまた見せつけられるということになる。

もっとも、志があったところで実現のために採用する手法が「悪い潮流」の権化である小池の二番煎じでは、その先はなかったとしか思えないのだが......。

<2020年6月30日号掲載>

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。著書『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)が読売新聞「2017年の3冊」に選出される。2019年より東京大学非常勤講師。本誌の特集「百田尚樹現象」で、2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。新著に『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館、2020年6月)。

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