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ウクライナでEUは「NATOの代わり」になれるのか? NATO第5条「のようなもの」の歴史と限界
11月にベルリンで開催された安全保障会議で、マシュー・ウィテカーNATO米国代表は、「ドイツが米国を訪れ、SACEURの地位を引き継ぐ用意があると宣言する日を楽しみにしている」と述べた。フランスではなく「ドイツ」と述べている所がミソである。
ヨーロッパ人のショックとウクライナの孤独
「欧州の自律化」の最大の課題は、技術力とパワーである。結局アメリカの力なしにウクライナは戦い続けることはできないし、欧州は自律性を備えることができない。特に戦略的輸送力、ISR(情報・監視・偵察)、ミサイル防衛、核抑止力と言われている。
ゼレンスキー大統領は「ロシアが再び侵略してきた場合、米国はどうするのか。これらの安全の保証はどのような役割を果たし、どのように機能するのか。全てのパートナーはどのように協力するのか。具体的にどのようにモスクワを阻止するのか」と前述のインタビューで問いかけた。悲痛な訴えである。
NATO加盟を断念するなら、一つずつ積み上げていくしかない。不確かな「NATO第5条のようなもの」であっても、米国上院によって承認されて法的拘束力を持てば、確かさのレベルは上がる。EU条約の第42条7項も、保証の足しにはなる。
一国の政治に頼ることがどんなにリスクの高いことか、バイデン政権からトランプ政権への変化を体験したウクライナ人は、骨身に染みて知っているだろう。二国間の防衛条約を増やせば、一つの国が頼りにならなくても、他でつながる可能性が高まる。ウクライナの行方は、高度な外交技術によって支えられていくだろう。
ヨーロッパ人のショックと、ウクライナの孤独。これらは日本人にとって「明日は我が身」とまではいかなくても、「あさっては我が身」くらいには思っておいたほうがいいのではないだろうか。どうすれば平和を保てるのか、外交力を上げることができるのか、真剣に考える時代が来ているのだと思う。
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