コラム

日本のリベラルメディアは和平が嫌い? 中東の新時代を認めたくない理由

2021年07月21日(水)12時00分

ところが朝日や時事は差異、対立、憎悪という中東の古いパラダイムに固執し、既に進展しつつある新しいパラダイムを批判する。リベラルとは互いの差異を尊重し多様性を受け入れるスタンスであるはずだが、そのリベラルメディアが多様性を認め平和を模索する中東諸国の動きを否定し、あくまでも「占領国家イスラエルが弱きパレスチナを蹂躙する」という古い鋳型に固執するのは何とも奇妙だ。

ラピドとアブダッラーは彼らの決意を「阻害しようとする勢力」がいることを認識した上で、「相違点を脇に置いて対話を重視する」というアプローチにより、平和な世界を実現させるべく努力しようと決意したのだと述べ、「和平はサインするだけの合意ではなく、生き方そのものである。(大使館開設の)式典は道の終わりではなく始まりにすぎない。そうすることで、つまり異なる決断をすることによって、われわれは平和を選択するのだ」と寄稿を締めくくっている。

中東の平和と安定は世界全体の利益につながる。日本も例外ではない。われわれは平和を志向するこうした新しい動きを歓迎し称賛すべきだ。

ところが日本のリベラルメディアは対立の構図に固執し、多様性や平和的共存を否定する間違った方向へと日本人を誘導している。彼らの報道はリベラルと呼ばれるのに全くふさわしくない。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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