<「棄教者は神と体制への反逆者」とされるイラン――信教だけでなく、表現や報道など自由を求める者たちが容赦のない口封じに遭っている>

反体制デモの続くイランで、メアリーの名で知られる21歳のキリスト教徒女性が当局に拘束されたと伝えられた。イスラム教からキリスト教に改宗した大学生の彼女は、SNSでの体制批判で知られていた。テヘランで拘束される直前にも、イラン人は体制が読ませたいニュースだけを読まされるという「ソフトな弾圧」に直面している、とツイートしていた。

イランではイスラム教を棄(す)て他の宗教に入信することは禁じられている。メアリーはキリスト教への改宗を理由に投獄された10人のイラン人についてツイートしたところ、昨年12月21日に大学から追放処分を受けた。1月12日に当局による拘束が伝えられた後、彼女の消息は完全に途絶えた。

キリスト教徒の迫害を監視するNGOオープン・ドアーズによると、2018年末からの1年間にイランで宗教を理由に拘束されたキリスト教徒は169人。同NGOが1月に発表した世界のキリスト教徒の迫害状況を報告する「ワールド・ウォッチ・リスト」で、イランは世界で9番目に迫害が苛烈な国とされた。上位10カ国にはアフガニスタン、ソマリア、リビア、パキスタン、イエメンなどイスラム諸国が並ぶ。

世界で昨年1年間に攻撃された教会などキリスト教関連施設は9488カ所、宗教を理由に投獄されたキリスト教徒は3711人、殺害されたキリスト教徒は2983人とされる。サハラ以南のアフリカでのイスラム過激派によるキリスト教徒への暴力の急増も指摘された。

レイプ犯を銃殺した女性が絞首刑に

昨年末、「イスラム国」は指導者バグダディの死に対する報復として、ナイジェリアでキリスト教徒11人を横並びにし斬首する映像を公開した。1月18日に「イスラム国」が公開した映像では、覆面をした戦闘員が「全世界のキリスト教徒」に対して報復を宣言し、キリスト教徒を銃殺した。

キリスト教徒の信仰の自由が政府の規制や過激派の暴力で著しく制限されている例は、イスラム諸国では枚挙にいとまがない。

米国国際宗教自由委員会(USCIRF)は昨年9月の報告で、世界で最も迫害されている宗教の信徒はキリスト教徒であり、その迫害は加速していると警告した。だがメディアはキリスト教徒の迫害の実態をほとんど伝えない。

市民を見捨て体制を擁護する