コラム

アメリカのサイバー戦略はなぜ失敗したのか──中国が築く「閉鎖ネット」と地政学的優位

2025年10月23日(木)11時41分

暴かれた中国のGreat Firewall

Great Firewallとは中国のネット検閲システム(と一般的には考えられている)である。中国からは海外のWEBが自由に見られないといった話しを聞いたことがある方も多いと思うが、それを可能にしているのが中国全土のネットの検閲を行っているGreat Firewallなのである。

このGreat Firewallがただの検閲システムではないことが、2025年9月にアムネスティとInterseclabから中国のGreat Firewallの国外提供に関するレポートで暴露された。

当局が規制する外部の特定のリソースへのアクセス制限、特定のワード含むトラフィックの遮断など一般の検閲システムのイメージ通りの機能以外に、ネットの全面遮断、VPNやTorの遮断、監視、利用者の特定などの機能を持っていた。

さらにヘッダーの改ざん、スクリプトの挿入、テキストの改ざんなどを行うことが可能で、マルウェアを送り込むこともできるようになっていた。

各国のISPに設置され、MITM(中間者攻撃)やDPI(ディープパケット・インスペクション)+AIといった手法を用いて、これらを実現している。

利用者を評価し、スコア化していることもわかっており、そのスコアに応じて異なる対応をおこなっている。それ以外にもDDoS攻撃を行うための仕組みなども存在した。

実際には中国を中心とした高度監視閉鎖ネットワークのようなものだったのだ。さらに、中国科学院の研究機関であるMassive and Effective Stream Analysis(Mesalab)に関係する企業Geedge Networksが、カザフスタン、エチオピア、パキスタン、ミャンマー、そして特定不能だった1カ国に輸出していた。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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