最新記事
北朝鮮

「若者を洗脳」「下心が」...高市首相の誕生を、北朝鮮はどう報じた? 見せた「反応」の意図とは

2025年10月23日(木)16時22分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
高市早苗首相の誕生に反応した北朝鮮

Kazuki Oishi/Sipa USAvia Reuters

高市早苗新総理が誕生した21日、北朝鮮は靖国問題でけん制球をぶつけてきた。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は21日付で、日本政府要人や国会議員が靖国神社に供物を奉納し参拝したことを厳しく非難する論評を掲載した。記事のタイトルは「執拗な参拝遊びは露骨な再侵略野望の発露」であり、同紙は「日本の政治家たちはまたも群れをなして参拝騒ぎを繰り広げた」と批判した。

■【動画】ロシア派遣で「自由」を謳歌する北朝鮮兵...「卑猥な動画」を楽しむ様子が撮影される

同紙は特に「政府当局者による供物奉納の遊びも行われた」と指摘し、今回の報道が秋季例大祭の期間中に石破茂氏が内閣総理大臣名で靖国神社に供物を奉納したこと、さらに「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に所属する議員らが集団で参拝した動きを念頭に置いたものとみられる。また、供物料を納めた自民党総裁の高市早苗氏に対しても、新政権発足と同時にけん制する意図があったと見ることができよう。

労働新聞は論評の中で、「極東国際軍事裁判で戦犯として処刑された特級戦犯を崇拝し称賛することは、国際的正義に対する公然たる挑戦であり蹂躙だ」と非難。さらに、「日本の再武装の動きが加速しているなか、軍国主義の亡霊を追慕するような参拝行為は、過去への郷愁ではなく、近い将来それを必ず復活させようとする再侵略の野望の表れだ」と断じた。

(参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と評価する金正恩氏の真意

同紙はまた、「こうした妄動は周辺諸国の警戒と覚醒を一層高めている」とし、「日本が真の平和国家へと進む道を拒み、再び軍国主義への道を選ぼうとしている」と警告。北朝鮮当局として、日本の右傾化や防衛力強化政策を「過去への逆行」と位置づけ、国際社会がこれを看過してはならないと主張した。

さらに、「対内的には戦争と敗戦を経験していない若い世代を軍国主義と復讐主義思想で洗脳し、対外的には『慣例的な』参拝遊びで国際社会に免疫を醸成しようという下心が敷かれているのだ」と断じている。

北朝鮮が靖国神社参拝を非難するのは恒例のことだが、今回は新政権発足直後にあたる時期であり、高市政権の外交・安保方針を牽制する意図がうかがえる。労働新聞は最後に「日本の支配層がいかに隠そうとも、再侵略の野望はその行動で明らかになっている」と強調した。

(参考記事:「自衛隊は英仏を合わせたより強い」戦慄する韓国と北朝鮮

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg



ニューズウィーク日本版 教養としてのミュージカル入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月17号(3月10日発売)は「教養としてのミュージカル入門」特集。社会と時代を鮮烈に描き出すポリティカルな作品の魅力[PLUS]山崎育三郎ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物はもみ合い、IEAが過去最大の備蓄放出提案

ビジネス

ペイペイ、米IPO価格は仮条件下限付近に 中東情勢

ビジネス

米BofA、第1四半期は純金利収入が7%以上増加見

ワールド

イスラエル大統領、対イラン戦争「期限より結果」 終
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中