<この秋、漢江のほとりで韓国ロックの過去と現在を体感>
先日、SNSで「韓国の音楽シーンではなぜバンド文化が育たないのか」という投稿が話題になった。しかしながら「育たない」前提で語るのは的確ではない。隣国の大衆音楽を長く見てきた者としては、むしろバンド文化はすでに根づき成長していると主張したい。
韓国のロックは1964年、シン・ジュンヒョンが率いるバンド Add4の楽曲「雨の中の女」で始まったと言われており、以降は社会の変化や時代の流れに翻弄されながら、独自のスタイルと美学を磨き上げていく。そして1996年に音盤事前検閲制度が廃止されたのを機にインディーシーンが活発化。おかげで多彩なサウンドを聴ける環境が整い、リスナーの耳も肥えていった。
シン・ジュンヒョンは「韓国ロックの永遠のゴッドファーザー」と呼ばれるアーティスト。彼が結成したバンド Add4は、当時外国曲のカバーが主流だったなかで、韓国語歌詞で自作曲を作って演奏した点で画期的だったという。
現地の野外フェスで体感するバンドサウンド
こうした流れの中でさまざまなバンドが活躍してきたわけだが、ロックに限定しなくてもフォークやジャズ、R&Bといった他のジャンルでも注目すべきバンドは常に登場している。とはいえ、一般の人にとってバンドサウンドを体験する機会は多くなく、それが冒頭の投稿の背景にあるのだろう。では韓国のバンドサウンドの魅力を知るためにはどうしたらよいのか。もちろん動画配信サイトなどをチェックするのもありだが、渡韓する費用と時間があれば、現地の野外フェスティバルに足を運ぶことをお薦めしたい。
韓国の野外フェスというと毎年夏に行われる『仁川(インチョン)ペンタポートロックフェスティバル』が有名だが、ベテランや新人など韓国のいろいろなバンドを一度にチェックしたい人は、秋に開催される『レッツロックフェスティバル』(以下、LRF)が良いだろう。会場はソウルを象徴する川「漢江(ハンガン)」沿いにある蘭芝(ナンジ)漢江公園。普段はキャンプやサイクリング、ウォータースポーツなどを楽しむ人でにぎわうところだ。
パンクロックの黎明期を彩ったベテラン勢
この場所で2日間にわたって繰り広げられるLRFは、何といっても韓国を代表するベテランバンドの参加が最大の魅力となっている。今年は10月3日(土)・4日(日)に開催する予定で、まだすべてのラインナップが公開されていない段階ではあるものの、すでに発表されているビッグネームはいずれも生で鑑賞したいバンドばかり。特に韓国パンクロックの黎明期を支えたNo BrainとCRYING NUTは野外にぴったりの豪快なサウンドで盛り上げてくれるに違いない。
No Brainは、1996年結成のロックバンド。「君は僕に惚れた」は2004年に発表されたアルバム「Stand Up Again!」の収録曲で、彼らの代表曲の一つ。
CRYING NUTは1993年に結成されたパンクロックバンド。「いいじゃないか」は同名映画の主題歌として作られた曲。「馬を走らせよう」はファーストアルバムのタイトル曲で、韓国インディーズ史に残るヒットとなった。