<曲の骨格からミックスまで全てAIと作る「Seoul Mood」。その制作工程を本人が語った>
今やAIは多くの分野で活用されるようになった。それは音楽の世界でも同様だ。日本ではAIを積極的に使ってオリジナル曲を制作したり、好きな作曲家のデータを取り込んだAIをバック演奏に使ったりする音楽家が続々と登場。K-POPシーンでもこの数年の間にAIを活用するアーティストが急増しており、なかには生身の人間がリアルに演奏しているとしか思えないクオリティの高いサウンドも少なくない。最近では「Seoul Mood」がその筆頭格だろう。
2026年夏にリリースしたSeoul Moodの「花火が上がった後 (After the Fireworks)」
音響エンジニアリング出身、15年のキャリアを経て辿り着いたAI音楽
Seoul Moodはプロデューサー兼作曲家のA氏(年齢と名前は非公開)のAI音楽プロジェクトだ。大学時代に音響エンジニアリングを専攻した彼は、約15年間にわたってプロデューサー/作曲家/作詞家/レコーディングエンジニアとして音楽制作に携わってきたという。並行して音楽教育やレコーディングスタジオの関連事業も運営していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により事業を整理。現在はフリーランスで活動しながらSeoul Moodを運営している。
ブランド名のSeoul Moodは、“韓国の都市・ソウルで感じられる様々な雰囲気や感情、その瞬間の場面を音楽で表現する”という意味を込めたそうだ。したがって特定のジャンルだけを追求するわけではなく、ソウルの生活で経験する感情や風景を音楽で記録する、ひとつの世界観に近いものと解釈するのが正しい。
制作は三段階 まずは曲の“骨格”をつくる
今回のこのAI音楽プロジェクトに興味をもった筆者はメールで取材を交渉。快く承諾してくれたA氏は、自身の制作に関することはもちろん、韓国のAI音楽の状況や展望などを率直に語ってくれた。まず気になるのが、どのような作業を経てオリジナル曲を生み出しているのか、という点である(以下のコメントはすべてA氏)。
「AIで音楽を作った経験がある方ならおそらく誰もが感じると思いますが、AIには、どんな曲を入力しても一定水準以上の完成度と聴き心地のいいサウンドを作り出してくれる特徴があります。それゆえに私は単に“良い曲”を作ることよりも、AIが音楽的にどこまで表現できるのかをテストするという考えで作業する場合が多いのです」
「私が作業する過程は主に三つの段階に分けられます。第1次では曲の全体的な枠組みを作成。第2次では完成した曲をステム(リズムパート、メロディパートなどいくつかの音のまとまり)に分解し、いまひとつだと思った楽器の演奏や楽器のトーンなどを整えます。最後の第3次では全体的なミキシング(複数の音源をまとめてバランスを整える作業)とマスタリング(配信・CD・映像などに合わせて音質・音量・バランスを整える作業)を行います」