昨年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞・グランプリ)受賞を含む8冠を達成し、今年のアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた映画『ヒンド・ラジャブの声』が、9月4日(金)より日本公開される。
同作は、2024年1月29日にパレスチナ・ガザ地区でイスラエル軍による銃撃下の車内に閉じ込められた6歳の少女ヒンド・ラジャブから助けを求める通報を受けた人道支援組織「パレスチナ赤新月社」のスタッフたちの視点で描かれる。
赤新月社に保管されていた実際のヒンド・ラジャブの音声記録を使用するなどリアリティーを追求した物語は社会派映画の枠にとどまらず、観る者の心を強く揺さぶる。
ニューズウィーク日本版では、8月3日に同作の独占試写会を実施。上映後には中東ジャーナリストの川上泰徳氏と、ライターのISO氏のトークショーが行われた。
「2万人以上の子供の死」を象徴するヒンド・ラジャブ
川上氏は新聞記者時代から長年パレスチナ自治区とイスラエルを取材し続け、昨年は監督作のドキュメンタリー映画『壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記』を発表。現地を知り尽くす視点から、『ヒンド・ラジャブの声』についてこう語った。
「(パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲した)23年10月7日以降、ガザ地区での酷い状況は日々ニュースになってきた。ヒンド・ラジャブさんの事件についてのこの映画は、子供が2万人以上殺害されているという事実を、シンボリックな出来事を通して凝縮した人間ドラマとして描いている。報道ではなく映画としてのすごみを感じた」
24年1月29日は、23年10月以降のイスラエル軍による地上戦が始まった後、ガザ地区の北部に住む人々が南へと避難し始めたといえる時期。ヒンド・ラジャブたちが乗っていたのも、避難しようとしていた車だった。
今年6月、国連独立調査委員会がガザ地区における子供の殺害についての報告書を発表したが、川上氏は「ヒンドさんの件も、事実として克明に報告されている」と紹介する。
「ガザで7万人以上の犠牲者が出るなか、なぜ2万人以上もの子供が殺害されているのか、事実やさまざまな解析をもとに報告している。大規模攻撃に子供が巻き添えになったのではなく、イスラエル軍はそこに子供がいることを知っていて攻撃している、という例がいくつも紹介されている。その代表的な例が彼女のことなんです」