『ヒンド・ラジャブの声』もヒンドは出てこないが、彼女を救おうとした周囲の人々にどんなドラマがあったのか、その葛藤を描くことで観客は「1人の少女の命の重み」を実感できる。

それを実感できれば、2万人以上の子供が亡くなったというニュースの背景にある1人1人の生活や家族にも思いを馳せることができると、川上氏は強調する。

ニュースや報道で数字だけを見ていると、その裏に「人間」がいることを忘れそうになるが、『ヒンド・ラジャブの声』ではそこにある「人間の魂」を感じられる、とISO氏も同意する。

川上氏が『壁の外側と内側』の制作時に感じたのは、「これは決して遠い国のことではない」ということだった。「自分たちに都合の良い情報だけを見て、見たくないものを排除しようとすれば、現代の情報化社会で同じことが起こり得るということを伝えたかった。だから、これはパレスチナ人だけの物語ではなく、私たちの物語でもある」

『ヒンド・ラジャブの声』も同じで、これはヒンドだけの物語ではない。

「例えばどこかで地震が発生した時、救急隊は命を救うために必死に動く。これはそういう『私たちの物語』でもあるんです。パレスチナの人たちを知るためだけでなく、自分たちとつなげて考えるためにこそ、こうした映画が存在するんだと思う」と、川上氏は締めくくった。

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