コラム

中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布される5つの言説

2024年10月30日(水)20時12分

沖縄とも日本とも関係なく展開される作戦

この作戦で流布されている主張には下記のようなものが確認されている。


1.沖縄県の米軍基地への反対

2.沖縄(琉球)独立の主張

3.中国と琉球の交流

4.台湾は中国の一部分という主張の支持(香港や新疆ウイグル自治区の問題についての中国支持を含むこともある)

5.活動支援の募金

1と2はわかるが、3は少し独立の話題から離れており、さらに4は全く別の話である。ただし、沖縄認知戦を仕掛けているのが中国であるという仮定に立てば、一貫性はないものの中国が拡散したい話題を盛り込んでいるという意味で4は理解できる。

しかし、不思議なことに1と2に関しても日本政府や沖縄県を主たるターゲットにしているわけではでない。

前項でご紹介したように作戦はいずれも中国語で中国由来のSNS(Weibo、Douyin、TikTok)中心に行われているのだ。その目的について、報道した新聞では日本へのゆさぶりや分断工作、あるいは中国国内の世論操作といった解釈がなされていた。

しかし、どちらの解釈も少し遠回りすぎるように思える。実は海外では、沖縄認知戦についてもう少し具体的で切実な問題と合わせて語られることが多かった。ここであげた4、つまり台湾問題である。

親中派インフルエンサーの活動

近年の沖縄認知戦について海外では中国の台湾併合を目指した活動の一環として分析されることが多いようだ。

あるいは台湾併合も含めたアジアにおける中国の戦略の一環として語られる。台湾の調査報道機関であるThe Reporterの分析によると、G7外相会議開催とSNSでの沖縄に関する投稿の増加が連動していたと分析している。

沖縄(琉球)独立を熱心に発信している親中派インフルエンサーの動きも台湾をかなり意識している。沖縄(琉球)独立を発信している親中派インフルエンサーでもっとも有名なRob Kajiwara(ロバート・カジワラ、比嘉孝昌、魏孝昌、梶原孝昌などの別名がある)は、ハワイ生まれの日系4世(沖縄のメディアは彼を「県系4世」と称している)。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story