コラム

日本のツイッター政治空間はリツイートが80% 政党に関するツイートを分析した

2021年02月17日(水)18時00分

RyanKing999 -iStock

<ツイッターのデータから、5大政党に関するツイートを分析したところ、リツイートが80%、たった1.7%のツイートがツイート全体の約40%に拡散し、リツイートの多い発言は各政党への批判であることがわかった......>

5大政党に関するツイートのおよそ80%がリツイート

今回、5大政党(自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、共産党)に関するツイートを収集して集計、分析した結果、全ツイートの79.28%がリツイートだったことがわかった。

ツイッター上での日本の政治シーンにおける分析の先行研究としてはドイツのファビアン・シェーファー教授によるものがあり、拙著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』でもくわしく取り上げた。その時の政治に関するツイートのリツイート率は56.7%だった。それに比べると今回のリツイート率はかなり高い。時とともに増加したのか、あるいは一時的なものかまではわからない。そういう基本的なデータが存在しないこともデータ整理を行った動機のひとつである。

ichida0217_1.jpg

グラフのようにツイート数でもアカウント数でもリツイートの比率が高いことがわかる。
ただし、リツイートの比率はテーマによって異なる。比較のために、「かわうそ(カワウソ)」、「卒業」、「尖閣」、「スプラトゥーン(スプラ)」、「コロナ」、「慰安婦」、「オリンピック」、「女性蔑視」という言葉で検索した結果が次のグラフである。なお、韓国(およびその蔑称)は2月13日深夜に起きた地震直後の1時間という特殊な条件下で観測したものである。ツイッターAPIの無償利用の上限は18,000ツイートだが、それを上回ったため、データのとりこぼしがある。取得できた範囲でのデータのリツイートは90%を超えた。

ichida0217_22.jpg

これだけから断定的なことは言えないが、社会的関心が高く、センシティブなテーマほどリツイートされやすい傾向が見て取れる。

5大政党に関するリツイートの状況をくわしくみてみると、リツイートの80%はたった9.92%のツイートが増幅されたものであり、50%は1.7%、30%は0.5%が拡散したものだった。アカウント数で見ると、リツイートの80%は23.43%のアカウントのツイートで、50%はたった3.82%、30%は1.18%のアカウントのツイートのリツイートで占められていた。リツイートはツイート全体の79.28%だったので、これを乗じれば全体への影響もわかる。たとえば、9.92%のツイートはツイート全体の63.42%、1.7%のツイートは39.64%、0.5%のツイートは23.78%に増幅されたことになる。

ichida0217_3.jpg

少数のアカウントが莫大なリツイートによって5大政党に関するツイートの多くのシェアを占めている。その内容のほとんどは政党に対するネガティブな発言だ。ツイートから名詞、動詞、形容詞を抽出し、図示したワードクラウドを見るとツイート内容がわかる。形容詞は特に負の感情にあふれていた。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story