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アングル:米農産物の購入増やす東南アジア諸国、世界の貿易構図に変化も

2025年08月31日(日)07時44分

 8月28日、東南アジア諸国が、大豆などのオイルシード類や穀物を巡る世界的な貿易の流れを変えつつある。写真はトウモロコシ畑でサンプルを採取する調査員。米インディアナ州ノースウエストで19日撮影(2025年 ロイター/Evelyn Hockstein)

Naveen Thukral

[シンガポール 28日 ロイター] - 東南アジア諸国が、大豆などのオイルシード類や穀物を巡る世界的な貿易の流れを変えつつある。米国がこれらの国との通商合意を通じて自国産の農産物購入を拡大する約束を取り付け、オーストラリア(豪州)やカナダ、ロシアといった従来の輸出国に取って代わろうとしているからだ。

インドネシアとバングラデシュは既に、米国向け輸出品に適用される関税を引き下げることと引き換えに米農産物の購入を増やすことに合意しているが、ベトナムやフィリピン、タイも米国との取引に基づいて飼料用穀物の買いを加速させる可能性がある、と複数の東南アジアの穀物トレーダーは話す。

シドニーに拠点を置くIKONコモディティーズの助言サービスディレクター、オレ・ホウエ氏は「米国の農産物輸出は確実にアジア地域で拡大するだろう。(政府間の)通商合意が(購入)圧力を生み出しているのと同じぐらい重要なのは、米国産の小麦や大豆ミールの価格が競合相手の製品よりも安い点にある」と指摘した。

人口と所得の増加が続くアジアは食料の純輸入地域で、世界の農産物輸出国にとって大事な市場の1つとなっている。米農務省のデータによると、世界の小麦・トウモロコシ・大豆ミール輸入の約30%をアジアが占める。

トレーダーやアナリストらは、米農産物の大量流入によって競合相手は価格引き下げを強いられるとともに、地理的により遠い別の地域へ輸出するためのコストが増大する恐れもあるとみている。

過去10年で黒海地域と南米は、アジア向け農産物輸出市場で米国のシェアを奪ってきた。

インドネシア小麦生産者協会のデータに基づくと、同国向け小麦輸出に占める米国のシェアは過去5年間に約50%も減少し、その穴をウクライナ、ロシア、アルゼンチンが埋めたことが分かる。

ところがシンガポールの2人の穀物トレーダーは、7月以降にインドネシアの製粉業者4社が米国産小麦を約25万トン買ったと明かした。7月にはインドネシア小麦生産者協会が、米国に関税率を下げてもらう取り決めの一環として年間100万トンの米国産小麦を購入する覚書に調印した。昨年の米国産小麦輸入量は69万3000トンだった。

同協会幹部の1人は「これらは製粉業者の民間取引である以上、価格が鍵となる。ただ、米国産小麦100万トンの購入は、われわれにとって問題にならないだろう」と述べた。

インドネシア向け小麦輸出の約4分の1を担ってきた豪州について同国の穀物トレーダー3人は、今後数十万トンの売り上げを失う恐れがあり、輸出業者の打撃はさらに大きくなるかもしれないと予想する。豪州の昨年のインドネシア向け小麦輸出量は300万トンだった。

コモディティー(商品)コンサルティング会社コルヌコピアの創業者、トービン・ゴリー氏は「豪州産小麦のインドネシアないしバングラデシュ向け売り上げが減少すれば、より遠い場所にそれらの小麦を出荷することになるだろう」と語った。

<飼料穀物>

バングラデシュ政府は7月20日、昨年は実質ゼロだった米国産小麦の輸入目標を年間70万トンに設定して二国間の貿易を強化すると発表。同30日には、早くも米国産小麦約22万トンの輸入を承認した。

先のシンガポールのトレーダーによると、飼料穀物市場として急成長しているベトナムも、米国産小麦・トウモロコシ、大豆ミールの輸入に乗り出す公算が大きい。

ベトナム農務省は6月、複数の国内企業が20億ドル相当の米農産物を買い入れるという覚書に調印すると明らかにしていた。この覚書には、中西部アイオワ州からトウモロコシ、小麦、穀類蒸留かす(DDGS)、大豆ミールなど8億ドル相当を購入する5つの取り決めが含まれている。

現在ベトナム向け農産物輸出規模が最も大きいのはアルゼンチンで、過去5年のデータを見るとトウモロコシ輸出の50%以上、大豆ミール輸出の65%を占める。

ただ米農務省のデータからは、ベトナムが8月末までの2024/25年度で米国産トウモロコシの購入を110万トンまで増やし、さらに同年度末までの受け渡し分が1万9051トンあったことが分かる。

25/26年度については、ベトナムの輸入業者は13万4000トンを既に発注。前年度の同じ時期の発注規模はわずか2000トンだった。

<タイとフィリピンも>

シンガポールの2人のトレーダーは、タイとフィリピンも米国産トウモロコシの重要な輸入国として浮上してくるのではないかとの見方を示した。

このうちの1人は、タイは今後、通商合意に関連し、米国産飼料用トウモロコシを100万トン余り購入してもおかしくないと指摘した。現在、それぞれ黒海地域と他のアジア諸国から輸入している飼料用小麦と飼料用トウモロコシを代替する上で必要な量に基づいているという。

またフィリピンの場合、輸入トウモロコシの関税を引き下げるという条件はあるものの、必要な飼料用小麦330万トンの代替需要として米国産トウモロコシの購入を拡大する可能性があるという。

タイ政府は8月1日に米国と通商合意に達した後、米国産大豆も最大200万トン輸入する方針を表明した。

米国大豆輸出協会の東南アジア・オセアニア地域ディレクター、ティモシー・ロー氏は「米国がこの地域へのアクセスを強化する機会を得るような生産的な通商協議が行われている。われわれは大豆ミールなどの米農産物需要の高まりを期待している」と述べた。

ロイター
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