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アングル:好調な欧州銀行株に試練、すでにピークを超えたか

2025年08月29日(金)19時02分

 欧州の銀行株は今年40%以上上昇し復活を遂げたが、フランス政局の新たな不透明感によってセンチメントがすでに悪化し、試練の時を迎えている。写真はパリ近郊の金融街にある銀行ソシエテ・ジェネラルの本社ビル。2023年9月、パリ近郊で撮影(2025年 ロイター/Gonzalo Fuentes)

Jakob Van Calster Mateusz Rabiega

[29日 ロイター] - 欧州の銀行株は今年40%以上上昇し復活を遂げたが、フランス政局の新たな不透明感によってセンチメントがすでに悪化し、試練の時を迎えている。

それでも投資家は今年これまで欧州で最も好調なセクターである銀行株を無視することは難しいだろう。 LSEGのデータによると、5年前に欧州銀行株指数 に投資した投資家は、純リターンが約300%に達し、欧州市場全体の70%を大きく上回っている。

以下では、株価上昇の背景と今後の見通しを整理する。

1.利益回復は長続きしない可能性

過去数年間の比較的高い金利に支えられた好調な収益と明るい成長見通しが株価を押し上げてきた。多くの銀行が市場予想を上回る利益を計上している。

モーニングスターのシニア株式アナリスト、ヨハン・ショルツ氏は、金利低下に伴い銀行の利益は横ばいか減少に転じると予想。また「関税の結果として、企業のデフォルト(債務不履行)は確実に増えるとみている」と述べ、貸倒引当金の積み増しが必要になる可能性があるとの見方を示した。

一方、モルガン・スタンレーのアナリストは、純金利収入が予想より早く底打ちしたことが第2・四半期決算で裏付けられたとし、2026年には再び伸び始めるだろうと述べた。

2.これ以上の利下げはなし

利益の勢いが鈍ったとしても、欧州中央銀行(ECB)の利下げ局面は終盤に近づいており、マイナス金利の時代は完全に過去のものになったとみられるため、銀行は引き続き支援材料を得られるはずだ。

モーニングスターのショルツ氏は「10年続いたゼロ金利・マイナス金利が欧州の銀行に与えた打撃を人々は本当に過小評価していた」と語った。

MFSインベストメントのポートフォリオマネジャー、シャンティ・ダス・ワーメス氏は「現在はほぼ理想的な状況にある。銀行は保有する預金基盤の恩恵をようやく十分に享受できる一方、信用面のストレスも目立っていない」と述べた。

また、英国では追加利下げが限定的との見方が、ナットウエスト、ロイズ、バークレイズを支えている。これらの株価は年初来で35─50%上昇している。ただ、2008年の金融危機前の水準にはなお届いていない。

3.勝者と敗者

STOXX欧州600銀行指数に採用されている銀行の平均的な株価純資産倍率(PBR)は長年1倍を下回っていたが、足元では1.12倍まで上昇している。これは株主価値の拡大に対する自信の表れだ。

ただし、全ての銀行が同じように好調というわけではない。ドイツとスペインの銀行株は、コメルツ銀行やサバデルを巡るM&A(合併・買収)観測を背景に相対的に堅調だ。

これに対し、スイスのUBSは米国の高関税、ゼロ%の政策金利、新たな資本規制などの課題に直面している。

フランスでは今週、政治的混乱が再燃したことで銀行株が急落。ソシエテ・ジェネラルは26日、4月以来の大幅な下落率を記録した。

4.リスクは低下

銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は低下しており、投資家は銀行に対してそれほどリスクを感じていない。ドイツ銀行のCDSは米国の銀行不安が欧州に波及した23年には一時200ベーシスポイント(bp)超まで急騰したが、現在は54bp付近で取引されている。

高リスクとされる銀行の「AT1債」も堅調な回復が見られる。プレミア・ミルトンのイアン・ビレル最高投資責任者(CIO)はAT1債について、投資適格級ではないが、実質的には投資適格級債に等しく、高いリターンが期待できると指摘した。

欧州の銀行株は最近、08年以来の高値に達しており、アナリストによれば、当時よりもレバレッジ水準が低下して力強い。

5.安値で買うべきか

キャンドリアムの欧州株式ファンダメンタル副責任者、クリスチャン・ソーレ氏は、銀行については中立的だとし、「勢いはまだあるが、株価にはあまり楽観的になれない」と述べた。リセッション(景気後退)に陥るリスクについて、予測はしていないが市場では織り込まれていないと分析した。

モルガン・スタンレーは今週、欧州の銀行株が弱含んでいるとして「安値で買う」ことを推奨した。

ロイター
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