アングル:高関税に知恵絞るインド中小企業、欧州・アフリカ開拓 迂回輸出も

8月28日、トランプ米大統領がインドからの輸入品に課した50%の関税が27日発効した。数万社ものインド中小企業は影響を和らげるため、欧州・アフリカ・アジア市場で新たな買い手探しに奔走している。写真は15日、インド・スーラトのダイヤモンド処理施設で撮影(2025年 ロイター/Amit Dave)
Ashwin Manikandan Ira Dugal
[ムンバイ 28日 ロイター] - トランプ米大統領がインドからの輸入品に課した50%の関税が27日発効した。数万社ものインド中小企業は影響を和らげるため、欧州・アフリカ・アジア市場で新たな買い手探しに奔走している。
インドには繊維や宝飾品、化学品など幅広い分野にわたる6000万近くの中小企業があり、うち5万超の輸出企業がトランプ関税に直面している。だが、政府は影響を受けた企業に対する財政支援や信用供与をまだ発表していない。そんな中で、輸出企業は米国に代わる市場開拓を急いでいる。
10万弱の中小企業で構成されている団体「インド中小企業フォーラム」が輸出志向企業を対象に実施した調査によると、回答企業の57%が湾岸諸国、中南米、アフリカ、英国を利用して貨物の迂回輸送や、付加価値を高める積み替えを検討していると答えた。
その目的は、出荷された製品を改造したり、再加工したりして新たな「原産国」のタグを取得した上で、米国市場へ輸出できる市場を探すことだ。
27%は米国以外の地域の買い手との取引を再開しており、16%は顧客をつなぎ留めるために注文の一部を他国の企業に外注することを検討している。
インド中小企業フォーラムのビノド・クマール代表は「米国に販売しようとするのは、有利な価格になることが多いから、という認識がある。しかし、他にも多くの市場が存在し、今まさにそれらの市場が焦点となっている」と指摘した。
世界5位の経済大国となっているインドで中小企業は中核を担っており、国内総生産(GDP)の約3分の1を稼ぎだし、輸出全体の45%を占めている。
<出荷前倒しでトランプ関税の影響緩和>
関税が上がる前、25%の段階では、各社は米国への商品輸出を前倒ししていた。
西部アーメダバードに拠点を置くフェロモン・ケミカルズを経営するサンケット・ガンジー氏は「8月の出荷量は月間平均の2倍近くとなり、欧州の顧客からの注文の一部を米国向けへ振り向けた」と説明。同社はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)を含む米国の顧客向けに香料用の特殊化学品を供給している。
ガンジー氏が経営する2社の年間売上高は25億ルピー。トランプ政権との関税を巡る対立が解決することに期待しつつも、米国向けのリスクヘッジとして欧州やロシア、アフリカの顧客との交渉を進めている。
南部ティルプールを拠点とするアパレルメーカー、エスティー・エクスポーツを所有するN・ティルクマラン氏は「当社は米国向け出荷の大部分を先週までに終えた。25%の関税ならば当社と顧客の間で負担を吸収して事業を続けられるが、50%では無理だ」と音を上げる。
<銀行にも影響>
米国向けの輸出はインドのGDPの2.2%を稼ぎ出しており、エコノミストらは今後1年間の経済成長率を0.6―0.8%ポイント押し下げる可能性があるとの見方を示す。インド準備銀行(RBI、中央銀行)は、インドの本年度(2025年4月―26年3月)のGDP成長率が前年度比6.5%になると予想している。
米国向け輸出の急減は、中小企業への融資規模が大きい銀行にも打撃を与える。
中小企業向け貸出残高は25年6月時点で12兆3000億ルピーで貸出全体の約7%を占めた。
国営銀行の行員は関税を巡る不透明感から「ここ数週間の中小企業向け融資は鈍化している」とし、「注意が必要な状況だ。これまでに融資実績のない輸出中心の中小企業への新規融資は控えている」と明らかにした。