気候変動で各国に対応義務、補償責任リスクも 国際司法裁が勧告

国際司法裁判所(ICJ)は23日、各国には気候変動の「緊急かつ存亡に関わる脅威」に対処する義務があるとの勧告的意見を出した。写真は米アリゾナ州グランドキャニオンの森林火災。14日撮影(2025年 ロイター/David Swanson)
Stephanie van den Berg Alison Withers
[ハーグ 23日 ロイター] - 国際司法裁判所(ICJ)は23日、各国には気候変動の「緊急かつ存亡に関わる脅威」に対処する義務があるとの勧告的意見を出した。富裕国に対し、温室効果ガス排出削減に向けた国際的な約束を順守する義務があり、怠れば気候変動の打撃を受けた国への補償責任が生じる可能性があると指摘した。
ICJの岩沢雄司所長は「各国は具体的な排出削減目標を達成するために協力しなければならない」とし、気候条約で課せられた「厳格な義務」を順守しなければ国際法違反に当たると述べた。
ICJはまた、各国は自国の管轄・管理下にある企業の行為に対しても責任があると指摘。
化石燃料の生産や補助金を抑制できない場合、損害を受けた国に補償などの形で完全な賠償が求められる可能性があるとした。
国連のグテレス事務総長はICJの意見を歓迎し、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の目標を全ての気候政策の基準とする必要があることを確認するものだと述べた。
一方、米ホワイトハウスのロジャース報道官は「トランプ政権は米国を第一に考え、米国の一般市民の利益を優先することに尽力している」とロイターに述べた。
岩沢所長は「温室効果ガス排出は明らかに、地域的に限定されない人間の活動によって引き起こされている」と言明。歴史的に先進国が排出量の大部分を占めてきたことから、これらの国が対策を主導する必要があると述べた。
専門家らは、ICJの勧告的意見に拘束力はないものの、法的、政治的な重みがあり、将来の気候変動訴訟で無視できないとの見方を示した。