アングル:トランプ減税法案、採決入り難航 共和党内の対立激化

トランプ米大統領(写真)と与党・共和党は、上院での可決を目指している包括的な税制・歳出法案を巡り、収拾のつかない党内の大論争に巻き込まれている。6月20日、ニュージャージー州モリスタウンで撮影(2025年 ロイター/Ken Cedeno)
David Morgan
[ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米大統領と与党・共和党は、上院での可決を目指している包括的な税制・歳出法案を巡り、収拾のつかない党内の大論争に巻き込まれている。共和党指導部は数日中に採決手続きに入りたい意向だが、さまざまな勢力からの抵抗が激しくなっている状況だ。
共和党のスーン上院院内総務、ジョンソン下院議長と政権幹部らは党所属議員に対して、トランプ氏が7月4日の独立記念日前にこの「大きく美しい法案」に署名できるよう、可決に向けた協力を促している。
しかし、議会予算局(CBO)が税制・歳出法案によって財政赤字が少なくとも2兆8000億ドル増加するとの試算を公表した後、共和党保守強硬派は一段の歳出削減を要求する姿勢を強めた。別の議員は低所得者向け公的医療保険「メディケイド」など社会福祉関連予算削減の影響を最小限にとどめることを狙って、法案の内容に反対の声を上げている。
現在の米議会の勢力図は、上院が共和党53議席、野党・民主党47議席、下院は共和党220議席、民主党212議席。両院とも債務問題を理由として1人ずつの共和党議員が当初から法案に反対してきた。
スーン氏は今週半ばまでに税制・歳出法案の採決手続きを開始し、週末に可決して下院に最終承認のために送り返す計画を立てている。
トランプ氏を「火消し役」と期待する共和党議員の間からは、同氏が党内の意見集約に向けた働きかけを強めるとの見方も聞かれる。
同氏は22日にソーシャルメディアで「共和党の偉大な結束、恐らく過去にないほどの結束。さあ偉大な大きく美しい法案を通そう」と呼びかけた。
税制・歳出法案については、民主党の議事妨害を回避して51票の単純過半数で可決する手続きが可能かどうかを審査する「上院議会助言者」の判断も待たれている。
<財政タカ派の抵抗>
共和党議員の一部は、より多額の予算節約につなげる協議の時間を増やしたいとの思惑から、スーン氏が掲げる手続き日程を受け入れていない。
財政タカ派のリーダーとされ、歳出規模をコロナ禍前の水準に戻したいと考えているロン・ジョンソン上院議員は、今週税制・歳出法案に賛成票を投じることができるかと聞かれると「全くあり得ない」と一蹴した。
ジョンソン議員は同志のマイク・リー、リック・スコット両上院議員と共同歩調を取っている。2人が希望しているのは、グリーン税額控除やメディケイドといった分野での予算節約だ。
スコット議員は記者団に、手元に十分な財政資金があるなら何も予算を変更する必要などないが、米国は2兆ドルもの赤字を抱えていると強調した。
CBOは先週、既に下院が可決した税制・歳出法案の内容ならば、向こう10年で連邦政府の財政赤字が2兆8000億ドル上積みされかねないとの見通しを示した。
また膨らむ借金の利払い負担増大も考慮に入れると、赤字拡大規模は3兆4000億ドルに達するという。
これに対して共和党は、減税による景気浮揚効果が企業活動を上向かせ、歳入が増えて財源不足を穴埋めすると主張している。
スーン氏は先週の上院本会議で、大統領経済諮問委員会の試算を引用し、税制・歳出法案は歳入を4兆1000億ドル増やすので、CBOの財政赤字見通しを補って余りあると説明した。
<議論収束も>
税制・歳出法案の上院修正版では、医療制度改革法の下で健常者向けプログラムを拡大した州におけるメディケイド提供者への税率は2031年までに6%から3.5%に引き下げられる。一部の共和党上院議員は、これは農村地域の病院への支援が削られるとして反対している。
ただ党内における話し合いの時間は間もなく終わりを迎え、態度が揺れている議員も最終的には法案支持に回る可能性もある。
ジョン・ケネディ上院議員は「何人か(の議員)はハムの入っていないハムエッグサンドウィッチで満足しなければならなくなる。それが現実だ」と言い切った。