ニュース速報
ワールド

日米の防空ミサイル増産協力、ボーイングの部品供給が障害=関係者

2024年07月22日(月)08時32分

日本の生産能力を活用して防空ミサイル「PAC3」を増産しようという米国の計画が、米防衛大手ボーイングの部品供給不足で問題に直面していることが分かった。写真はPAC3迎撃ミサイルシステムの前を行進する自衛隊員。2017年10月、東京で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

(体裁を整えて再送します)

[東京 20日 ロイター] - 日本の生産能力を活用して防空ミサイル「PAC3」を増産しようという米国の計画が、米防衛大手ボーイングの部品供給不足で問題に直面していることが分かった。事情を知る関係者4人が明らかにした。      

米国はウクライナ支援で不足する弾薬の増産を急いでいるが、複雑な調達網(サプライチェーン)に同盟国の生産能力を取り込むことの難しさが浮き彫りになった。      

PAC3は米ロッキード・マーチンが元請けメーカーとして手掛ける迎撃ミサイル。日本では三菱重工業が中心となって米国から技術を導入し、自衛隊向けに生産している。同関係者らによると、日本の生産数は年間30発程度。それほど大きな投資がなくても2倍程度に増やせそうだという。

ロッキードは、2027年までに年間生産を500発から650発へ引き上げようとしている。同計画に詳しい前出と別の関係者によると、米国はなるべく早期に世界全体で年間750発以上へ増やしたい考え。

日本は昨年12月、国内で生産したPAC3を米国へ輸出できるよう装備移転の指針を改訂した。さらに今年4月の日米首脳会談で、両国は防衛装備品の生産を強化するため協議体を設置することで合意した。6月に東京で1回目の会合を開き、PAC3など不足するミサイルの生産増強を具体的な協力項目の1つとした。      

前出と別の関係者によると、エマニュエル駐日米大使は会合に出席した日米の防衛企業関係者に強く増産を要請したという。

問題は、シーカーと呼ばれる主要部品の供給が追いつかないことだと、事情を知る前出の関係者4人は話す。PAC3を目標へ誘導する「目」に当たる部品で、ボーイングが米国内で生産している。      

「ミサイルのシーカーが増産のボトルネックになっている」と、関係者の1人は言う。「日本の増産には時間がかかるだろう」と語る。      

ボーイングは昨年、シーカーを生産するアラバマ州の工場拡張に乗り出した。3割以上増やす計画だが、新しい生産ラインは27年まで稼働しない。同社は年間生産量を公表しておらず、昨年11月時点で累計出荷数が5000個に達したとしている。      

ボーイングはロイターの取材に対し、元請けのロッキードに問い合わせるよう求めた。    

日本が十分な量のシーカーを確保できても、60発よりさらに増産するには追加の設備投資が必要で、費用を誰が負担するのかが問題になる。日本政府は自衛隊向け武器・弾薬の生産投資には資金支援をするが、輸出向けの生産は相手先の要望などに合わせて仕様を変えるのにかかる費用を助成する枠組みしかない。

日本の防衛装備庁と三菱重工はロイターの取材にコメントを控えた。米国防総省は、自国と同盟国、パートナーを同時に防衛する十分な生産能力の確保に自信を持っていると回答した。ロッキードは、日本の生産については米国防総省、日本政府、三菱重工に問い合わせるようロイターに求めた。

日米は今月下旬、外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開く。防衛装備品の生産協力も議題の1つになる可能性がある。

(久保信博、Tim Kelly 取材協力:Mike Stone, Allison Lampert, Idrees Ali、金子かおり 編集:佐々木美和)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 5
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 6
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 10
    最高指導者ハメネイ師死亡(イラン発表)、トランプ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中