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トヨタが実証都市での実験開始、300人まず入居 最新技術開発目指す

2025年09月25日(木)19時07分

トヨタ自動車が25日、実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)で第1期の実証実験を開始した。写真はトヨタのロゴ。オランダで2月撮影。 (2025年 ロイター/Piroschka van de Wouw/File Photo)

Maki Shiraki Daniel Leussink

[裾野市(静岡県) 25日 ロイター] - トヨタ自動車が25日、実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)で第1期の実証実験を開始した。住民が実際に暮らす街をつくり、自動運転や自律型物流などの最新技術を日常生活で活用、開発を進める。トヨタグループ12社、グループ外7社の計19社が参画。業界の垣根を越えて連携し、最新技術・サービスの開発を目指す。

豊田章男会長は「ウーブンシティで起こすのは掛け算。掛け算は最低でも2社が必要だが、かければかけるだけ数字は大きくなっていく」と期待を示した。

ウーブン・シティは生産子会社のトヨタ自動車東日本の旧東富士工場跡地に展開し、完全子会社ウーブン・バイ・トヨタ(東京・中央)が建設・運営する。

第1期は、東京ドーム6個分に相当する敷地面積29万4000平方メートルのうち約4万7000平方メートルで、モビリティのテストコースと位置付ける。住居8棟を含む建物14棟が立地、延べ床面積約2万5000平方メートルの地下空間もある。

完全自動運転を見据えた電気自動車(EV)「イーパレット」や小型電動パーソナルモビリティなどを専用道路で走らせる。地下空間は全建物へつながっており、都市内の物流網として活用。自動運転ロボットによる宅配を行うほか、ごみ収集なども検討する。歩行者用信号を通常は青色のままにし、車が近づいたタイミングで赤色に変える制御システムを導入する。

街には、まずトヨタ関係者とその家族を中心に段階的に入居する。豊田会長の息子でプロジェクト責任者の豊田大輔氏もその1人。住民数は当初は第1期で約360人を予定していたが、300人となった。将来的には約2000人が住む計画。26年度以降は一般の人も参加できるようになる。

豊田大輔氏は、ウーブン・シティで「未来につながる失敗も重ねながら、いろいろなデータを集めて開発を加速させたい」と話す。実際の市街地での実証は「調整に時間がかかることが現実的にある」とし、独自の街で実証を行う意義を語った。

異業種の企業が参画することに関しては「自動車産業以外の方が同じものをみると違う捉え方をされることがある。視野が広がりさまざまな気づきがある」と述べた。

実証には、通信教育大手の増進会ホールディングス、犬・猫用など医薬品の開発製造販売の共立製薬、ダイドーグループホールディングス傘下の飲料大手ダイドードリンコ、珈琲製造大手のUCCジャパンなどが参加する。アーティストのナオト・インティライミさんが音に関する実証を始める。

ダイキン工業は、一部の住民に花粉のない空間などの実証に参加してもらう。日清食品はイーパレットを店舗として使い、美味しさと栄養を最適化した食事を無償提供し、将来的には飲食店の展開も目指す。増進会は0歳から6歳までを対象とした保育園を運営、カメラで行動観察した映像をAI技術で解析・活用する。

ダイドーは、商品サンプルやボタンなどがついておらず画像や映像を投影できる自動販売機を、UCCはコーヒーが人々の創造性や生産性に与える影響を実証する。トヨタが出資するロケット開発ベンチャー、インターステラテクノロジーズ(北海道大樹町)は街の外でトヨタのものづくりに関するノウハウや人的資源を提供し、開発を支援する。実証には今後、海外の企業が参画する可能性もある。

ウーブン・シティを巡っては、豊田会長(当時は社長)が2020年1月、米ラスベガスでのテクノロジー見本市「CES」で、富士山の裾野にある土地に未来の実証都市をつくると宣言。構想の公表から5年を経て実証を始動させる。

ロイター
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