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9月ロイター企業調査:植田日銀総裁、「評価しない」が3割に増加 下期業績は3割超で下振れも

2025年09月11日(木)10時05分

 9月のロイター企業調査で、就任から2年半の折り返しを迎えた日銀の植田和男総裁(写真)の金融政策運営について、「あまり評価しない」「評価しない」と答えた割合が30%と、昨年12月時点から6ポイント増えた。7月31日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Miho Uranaka

[東京 11日 ロイター] - 9月のロイター企業調査で、就任から2年半の折り返しを迎えた日銀の植田和男総裁の金融政策運営について、「あまり評価しない」「評価しない」と答えた割合が30%と、昨年12月時点から6ポイント増えた。マイナス金利の解除を評価する声がある一方で、金利正常化のペースは「遅すぎる」との指摘も目立った。一方、下期の業績見通しについては、回答企業の3割超が下振れの可能性を示した。

調査期間は8月27日─9月5日。497社に質問し、238社が回答した。

植田総裁の金融政策運営について「大いに評価する」と答えた企業はなかった。「評価する」は51%から47%に減少し、「あまり評価しない」は20%から27%に増加した。「評価しない」は4%から3%にわずかに減った一方で、「分からない」との回答は23%だった。

評価すると答えた企業からは、「ゼロ金利解除を実行した点は評価できる」(卸売り)、「金利正常化への着手」(放送)などマイナス金利解除という政策対応を前向きに受け止める声のほか、「市場と対話しながら賃金と物価の悪循環を防ぎつつ、マイナス金利政策解除を段階的に進めている」(小売)といった運営姿勢を重視する意見も寄せられた。

一方で、あまり評価しないと答えた企業からは「利上げのタイミングが遅すぎる」(化学)、「金利の適正化が遅い」(窯業)といった金利正常化のスピードを問題視する声が目立った。「どういう理由で誰のために何をしたいのか政策がわかりづらい」(食品)といった回答もみられた。

日銀が保有する多額の上場投資信託(ETF)の処分については、「任期中にこだわらず適切な方針を探るべきだ」との回答が60%と最も多く、企業の間では任期に左右されず、状況に応じた柔軟な対応を望む姿勢が強いことがうかがえた。

「5年の任期中に何らかの方針を打ち出すべき」が21%で続き、「日銀が保有したままで問題ない」とする声も10%あった。「市場に悪影響を及ぼさないペースで処分を進めるのがよいのではないか」(ゴム)といった意見もあった。

植田総裁は2024年3月の金融政策決定会合で、8年余り続いたマイナス金利政策の解除と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃に踏み切った。その後、物価や賃金の動向を見極めながら、同年7月には政策金利を0.25%に引き上げ、さらに25年1月に0.5%まで上げた。

<下期業績は3割超が下振れ懸念 自社の株価「十分評価されず」も3割超>

下期の業績見通しについては、47%が「ほぼ想定通り」と回答。「どちらかといえば下振れの可能性」が32%で、「上振れの可能性」(14%)を大きく上回った。達成に向けた懸念要因では「原材料価格の動向」が61%で最多となり、「国内の消費動向」が50%で続いた。加えて、米政権による関税の影響をリスクとして挙げる声もあった。

このほか「米中関係の悪化」(ゴム)、「半導体市況の動向」(窯業)、「最低賃金見直しによる人件費増」(サービス)を指摘する企業もあった。

日経平均が史上最高値を更新する中、自社の株価について尋ねたところ、業績などに照らして「十分に評価されていない」と回答した企業が34%で最も多かった。「過大だと思う」との回答は15%にとどまり、「フェアだと思う」とした企業は26%だった。また、25%は「上場していない」と答えた。

調査結果からは、株式相場の好調にもかかわらず、企業が自社の評価に必ずしも満足していない現状が浮き彫りとなった。

ロイター
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