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マクロスコープ:自民総裁選、小泉氏周辺は準備着々 専門家「結局は財政吹かすか」

2025年09月11日(木)13時12分

 石破茂首相の辞任表明に伴う自民党総裁選(9月22日告示、10月4日投開票)で、小泉進次郎農林水産相(写真)の動向が注目されている。5月21日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Yoshifumi Takemoto Tamiyuki Kihara

[東京 11日 ロイター] - 石破茂首相の辞任表明に伴う自民党総裁選(9月22日告示、10月4日投開票)で、小泉進次郎農林水産相の動向が注目されている。高い知名度に加えて国会議員からの支持も厚く、立候補すれば本命視される可能性が高いからだ。高市早苗前経済安全保障相に比べて財政規律重視のポジションを取るとも見られており、マーケットの関心も高い。

すでに周辺議員らが着々と立候補に向けた準備を進めるが、同様に期待を集めた1年前の総裁選で3位に沈んだ記憶は新しい。同じ轍を踏めば政治家として大きな傷を負うリスクもある。

<準備着々>

「党が一致結束しなければ野党と向き合う環境はできない。一致結束する党の形、環境をつくるために私自身が何ができるかを考えて判断したい」。小泉氏は9日の閣議後会見で立候補の意思を問われ、こう述べた。

政府関係者によると、小泉氏に近い国会議員らはすでに政策立案など立候補に向けた準備を進めている。小泉氏自身も他の閣僚と水面下で接触を図るなど、支持の取り付けに動き始めているという。自民の参院幹部は「高市氏と小泉氏の一騎打ちになる」。経済官庁幹部も「小泉氏以外が首相になるシナリオは思いつかない」と言い切る。

<「経験不足」の指摘も>

ただ、小泉氏には「苦い経験」もある。昨年9月の前回総裁選では、立候補に至るまで本命と目されていたものの、選挙戦で掲げた「解雇規制の見直し」が安易な解雇につながるなどと批判を浴び、「選択的夫婦別姓の法制化」は保守色が強い議員や党員から不評を買ったとされる。

仮に今回も敗退となれば、政治家としての影響力にも影を落としかねない。

加えて、中国とロシア、北朝鮮の接近や米ロ首脳の動向など日本を取り巻く安全保障環境が劇的に変化するなか、小泉氏の外交経験の浅さを懸念する声もある。党関係者は「米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領と渡り合える首相でなければだめだ」と語った。

衆参ともに少数与党となったことで、新総裁にとって野党との連携構築は至上命題となる。小泉氏は同じ神奈川県選出の菅義偉元首相を通じて日本維新の会と強いパイプを持ち、党内には「小泉氏が総裁になれば自公維連立で政権が安定する」(参院議員)との期待がある。一方、「野党にのまれずに協力を引き出すには豊富な政治経験が必要だ」(衆院議員)と危惧する声も聞かれる。

<財政拡張の思惑>

小泉氏の動向を市場はどう見ているのか。SBI証券・チーフ債券ストラテジストの道家映二氏は「マーケットでは基本、誰が首相になっても少数与党で野党に譲歩が必要になるため財政を吹かすリフレ的政策を見込む人が多い」と話す。

「高市氏の勝利を見込む『高市トレード』をやっている人は、高市氏が勝てば日銀は利上げしにくくなり株にはプラスだと踏んでいる」とした上で、「小泉氏が立候補して有利となった場合、マーケットの反応はやや読みにくいが、消費税減税を掲げることはなさそうで結局は財政を吹かす方向との連想になりそうだ」とみる。

一方、仮に小泉氏が立候補しない場合、「林芳正官房長官では高市氏に勝てないとの観測から、高市氏有利の連想で円安・株高に振れる可能性がある」と指摘する一方、「個人的には外交能力、予算委員会の処理能力など総合的に考えて小泉氏が立候補しなかった場合は林氏が勝つ可能性もあるとみている」と話す。

(竹本能文、鬼原民幸 編集:橋本浩)

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