ゴールドマン、日本のスタートアップ投資を加速 「市場に変化」

7月30日、ゴールドマン・サックス(GS)証券が、日本の未上場企業へのグロースエクイティ投資を加速させている。写真は同証券のロゴ。ニューヨーク証券取引所で5月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)
Miho Uranaka Sam Nussey
[東京 30日 ロイター] - ゴールドマン・サックス(GS)証券が、日本の未上場企業へのグロースエクイティ投資を加速させている。日本市場への投資家の関心が高まる中、東証の新規上場基準見直しが小規模な早期上場から大型上場への流れを促し、上場までの期間が長くなることでより大きな投資機会が生まれると期待される。こうした環境変化を受けて外資系ファンドの参入が進み、未上場株のセカンダリー市場も広がりつつある。
GSはリーガルテックや医療テックなど成長分野のスタートアップに成長資金を供給し、世界の投資家の資金を日本に呼び込む流れをけん引している。今月に入り、調剤薬局向けの業務システムを展開するカケハシ(東京・港)に約100億円を出資したほか、AI(人工知能)を活用した契約書の審査ソフトを開発するリーガルオン(東京・渋谷)への追加出資も明らかにした。
日本のスタートアップ市場には、ベンチャーキャピタルが投資後に売却先を見つけにくいという課題があった。また、出資の多くが事業会社による研究・開発目的で行われてきた背景もあり収益性への意識が相対的に弱く、評価額10億ドル超のユニコーン企業が育ちにくいことも指摘されてきた。
GSのアセットマネジメント部門で企業投資を統括する糸木悠氏によると、こうした状況に変化が見え始めている。「外資系のプレーヤーの参入により、ファンドに対して売るという選択肢が現実的になってきた」と話し、日本の未上場のセカンダリー市場が広がりつつあることに言及した。
実際、外資によるグロース投資件数はまだ限られている。米大手ファンドのKKRが昨年、人事労務ソフトを手掛けるスマートHR(東京・港)に出資した例があるものの、こうした事例は少数にとどまる。
東京証券取引所は今年4月、2030年からグロース市場で上場後5年を過ぎた企業が時価総額100億円未満なら上場廃止とする方針を示した。
GSでグロース投資を担う松本哲哉氏は「限られた人材リソースがたくさんの会社に薄く分散してる。上場をリードできるようなCFO(最高財務責任者)の数は、実は日本には少ない」と述べ、分散上場が経営人材の希薄化を招いていると指摘。東証の新基準は、未上場のまま成長を支える動きに資金が向かう契機になるとの見方を示した。
第三者の資金を活用して企業に投資するアセットマネジメントビジネスでは、GSのグロースエクイティ戦略ファンドは52億ドル(約7000億円)を集め、日本への資金配分を近年大きく増やしている。
その背景について、糸木氏は「中国に投資されていた資金が行き場を失い、次の市場として光が当たっている」と説明。地政学リスクの変化に加え、コーポレートガバナンス改革や収益性改善が進んでいることで日本市場が再評価されているという。
投資対象業界としては医療、不動産、建設、モビリティなど、収益拡大が期待できる市場規模の大きい領域を優先している。