7月ロイター企業調査:上場「デメリット大」が2割、東証要請など負担に

7月17日、7月のロイター企業調査で、株式を上場することの影響を聞いたところ、メリットがデメリットを上回るとの回答が54%と半数を超えた一方で、デメリットがメリットを上回ると答えた企業も20%に上った。都内の株価ボード前で2020年10月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Ritsuko Shimizu
[東京 17日 ロイター] - 7月のロイター企業調査で、株式を上場することの影響を聞いたところ、メリットがデメリットを上回るとの回答が54%と半数を超えた一方で、デメリットがメリットを上回ると答えた企業も20%に上った。東京証券取引所による適時開示の要請や「資本コスト・株価を意識した経営」の推進などが負担として意識されている。
また、日本企業の役員報酬は「引き上げが必要」とした企業が60%に達した。優秀な経営者の確保などにより日本企業の競争力を引き上げるには、海外企業と比較して低水準にある役員報酬の引き上げが必要との指摘がある。
調査は7月2日―11日に実施。調査票発送企業は497社、回答社数は241社だった。調査対象の約3分の2が上場会社となっている。
上場企業は「上場を維持」、非上場企業は「上場の計画はない」とどちらも現状維持の回答が多数を占めた。一方、半数以上の54%が上場するメリットについて、デメリットを「上回る」・「やや上回る」と回答。ただ、デメリットがメリットを「上回る」・「やや上回る」との回答も計20%と少なくなかった。
足元でMBO(経営陣による自社買収)が増加するなど、非上場化を選択する動きも目立ってきている。東証によると、2025年上期の上場廃止企業数は59社と前年同期から8社増えた。
上場のメリットは「社会的信用」が80%で最も多く、「人材獲得」が70%と続いた。「例えば住宅ローンなど、上場による企業の信頼度向上は会社および従業員にとっても大きなメリットがある」(情報サービス)ほか、「ガバナンス向上」(紙・パルプ)、「株主との対話による経営意識の向上」(電機)など、監視機能の効果を指摘する声があった。
一方、デメリットは「東証による資本コスト・株価を意識した経営の推進」が63%、「物言う株主への対応」が61%となった。「東証の要請が厳しすぎる。買収の脅威があり、費用がかかりすぎてメリットが何も感じられない」(運輸)、「有価証券報告書等の開示項目の増加、早期提出への対応」(鉄鋼)と上場コストの高さを指摘する声が多く聞かれたほか、「短期的な利益の追求で十分な設備投資、修繕がされない懸念がある」(化学)と、経営が短期収益重視に偏るとの声も聞かれた。
<世界展開に役員報酬引き上げ必要の声>
海外企業に比べて役員報酬が低いと指摘される日本企業。役員報酬を「大幅に上げて行く必要がある」が7%、「徐々に上げて行く必要がある」が53%と、引き上げが必要との回答が計60%に上った。「世界展開する企業が海外のプロ経営者を招聘(しょうへい)する場合、日本の給与水準では足りないと思われる。海外と戦う会社であれば上げる必要がある」(化学)、「日本企業のグローバルでの競争力を損ねる要因となっており、諸外国との差を縮めていく必要があると考える」(窯業)と世界比較を理由とする声が多く聞かれた。
引き上げる場合には「経営責任および業績と連動した報酬制度に移行し、長期的には上げていくべき」(運輸)など、業績連動や経営責任を伴う形にすべきとの声が出た。
一方、現状水準で良いと回答した企業からは、人手不足や物価高のなか「従業員賃金を上げた方が良い」(輸送用機器)との指摘が多く聞かれた。