ニュース速報
ビジネス

アングル:年末商戦で返品急増、米小売りが「返品無し返金」を積極採用

2023年12月03日(日)07時56分

 11月30日、 米国では、年末商戦の幕開けとなるブラックフライデーやサイバーマンデーにオンライン購入した商品の返品を望む顧客に対し、返送にかかるコストが商品価値を上回るような商品は返送しないよう求め、返金だけに応じる小売業者が増えている。写真は11月、ニューヨーク州ガーデンシティの百貨店に掲示されたブラックフライデーのサイン(2023年 ロイター/Shannon Stapleton)

Lisa Baertlein Arriana McLymore Siddharth Cavale

[ロサンゼルス/ニューヨーク 30日 ロイター] - 米国では、年末商戦の幕開けとなるブラックフライデーやサイバーマンデーにオンライン購入した商品の返品を望む顧客に対し、返送にかかるコストが商品価値を上回るような商品は返送しないよう求め、返金だけに応じる小売業者が増えている。

返品サービス会社goTRGがウォルマートやアマゾン・ドット・コムなど主要小売企業21社の幹部500人を対象に調査したところ、こうした「返品無し返金」を採用している割合が今年は59%に上った。

goTRGのセンダー・シャミス最高経営責任者(CEO)によると、昨年はこの割合が26%だった。

余分なコストを徹底的に省くテクノロジーを導入する小売企業が増えるにつれ、特定のオンライン購入に対して返品不要方針を採用する企業が増えているとシャミス氏は語る。ただ、買い物客がこの制度を悪用する恐れがあるため、こうした情報を「小売業者は表に出したがらない」という。

別の返品サービス会社、オプトロによると、今年の米年末商戦では、返品が昨年より28%増えて1730億ドル(25兆5300億円)相当に達する見通しだ。

同社のアメナ・アリCEOは、「返品のスーパーボールはブラックフライデーの翌日に始まり、2月まで続く」と語り、返品処理の繁忙期を米国最大のスポーツイベントであるプロフットボールNFLの王者決定戦に例えた。

返品対応には通常30ドル前後のコストがかかる。輸送、仕分け、再販売(多くの場合、値引きされる)の費用がかかり、赤字を出して処分することもあるため、利益を圧迫する。そのため今年は90%近い小売業者がさまざまな方針を見直したとアリ氏は言う。こうした変更には、一部返品を有料化したり、オンラインでの購入商品を実店舗に返品するよう求めたりすることが含まれる。

アリ氏は返品コストについて、「見過ごすわけにはいかないものだ」と語った。

ウォルマートは2月、動画共有サイトのユーチューブに、同社マーケットプレイスを利用する販売業者向けに、「返品無し返金」ポリシーの設定方法について解説する動画を載せた。ロイターは最近それを閲覧した。

この件についてウォルマートは、同社は交換や返品について検討する際、顧客体験と自社の利益のバランスを取っていると指摘。その一環として、第三者である販売業者によるコスト管理を助ける方法を探っているが、この解説動画は古く、現在は非公開にしていると説明した。

ロイターの取材に応じた買い物客17人は、アマゾンやイーベイなどの企業から、20ドル前後から300ドル程度の商品を返品しないよう求められたと語った。この中には欠陥品や誤配品も含まれるという。

アマゾンは「利便性のため、また価格を低く抑えるために」、少数の返品については返送しないことを顧客に認めているとした。

<返品ラッシュ>

アプリス・リテールと全米小売り連盟のデータによると、昨年の返品率はパンデミック以前の2倍近くに達し、米国の小売売上高全体の16.5%を占める8168億ドル相当の商品が返品された。

下着、寝具、食品の販売業者は、衛生上の懸念や健康安全上の規則に基づき、返品不要ポリシーを真っ先に採用していた。補整下着のシェーパーミント社は、返品したい商品を寄付したり友人にプレゼントしたりするよう顧客に求めることで、自社への忠誠心を高めるポリシーを採用している。同社を所有するトラフィレア社のブランド・ディレクター、ガブリエル・リチャーズ氏が明らかにした。

返品不要の慣行が主流になったのは、パンデミック初期のオンライン購入ブームで、送料が高騰し、倉庫がパンクした時期だ。企業は、不要になったTシャツやペットのおもちゃ、家具などを引き取ることをやめた。

最近では、小売業者は返品にかかるコストと買い物客の価値を天秤にかけている。大口の買い物客ほど、返品不要ポリシーの適用条件を満たしやすいと専門家は指摘する。

アマゾンやシェーパーミント、その他の小売業者は、不正行為と闘うため、信頼できる顧客にサービスを提供するためのテクノロジーを利用している。

アマゾンは「当社は不正行為を非常に深刻に受け止めており、悪質な者が我々の管理から逃れようとした場合には行動を起こし、法執行機関と協力して責任を追及している」とした。

ただ、一部の不正防止策は買い物客を遠ざけている。

ロサンゼルス在住の写真家、パメラ・ピーターズさんは夏の終わりごろ、熱風を吹き出す300ドルのポータブル・エアコンを返品せずに購入代金を返金してもらった。ただ、そのためには電源コードをが切れた状態の商品の写真をアマゾンの販売業者に送らなければならなかった。

ピーターズさんは、この商品を処分して別の店で代替品を購入。「非常にもったいないことだ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中