コラム

「会議は踊る、されど進まず」......アラスカの茶番劇でアメリカが失ったもの

2025年08月26日(火)17時25分
プーチン

米ロ首脳会談後に記者会見に臨んだトランプ(右)とプーチンの影 KEVIN LAMARQUEーREUTERS

<アラスカでの米ロ首脳会談と、その直後の米・ウクライナ・欧州首脳会談は「会議は踊る」の言葉が相応しい、結果の伴わない内容だった。しかし、空疎な会談は先々に重大な禍根を残しかねない>

8月15日にアラスカで行われた米ロ首脳会談は、醜悪な茶番劇と言うほかないものだったが、ロシアのプーチン大統領は大きな成果を手にした。トランプ米大統領も、本人の頭の中ではそれを勝利と位置付けているようだ。

しかしこの米ロ首脳会談と、その3日後にアメリカとウクライナとヨーロッパ諸国の首脳がホワイトハウスで行った首脳会談──いずれの首脳会談でもトランプの病的な自己陶酔ぶりがよく表れていた──は、空疎なものに終わったばかりでなく、先々に重大な禍根を残しかねない。


一連の会談の結果、ロシアの外交的立場は強まった。ロシアは、ウクライナに対して「肉弾戦」による人海戦術を続けるだろう。一方、アメリカは、ロシアのかたくなな主張に同調し、反欧米的な言い分にも足並みをそろえつつ、ウクライナがロシア軍の攻勢に耐えるために、「安全の保証」として武器などを提供(実際には売却)することには同意した。

この2つの首脳会談には、5つの「当事者」が参加していた。ロシア、アメリカ、ウクライナ、ヨーロッパ諸国、そして自己愛的傾向の強いトランプの自我である。この5者は、それぞれ異なる目標を持って首脳会談に臨んだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、利下げ観測が支援 ナスダック最

ワールド

エルサレムのバス停で銃撃、6人死亡 犠牲者にスペイ

ビジネス

米消費者、雇用巡る楽観的な見方後退 インフレ期待横

ワールド

フランスも首相辞任へ、議会が内閣信任投票を否決 政
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    石破首相が退陣表明、後継の「ダークホース」は超意外なあの政治家
  • 4
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 5
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 6
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 7
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 8
    コスプレを生んだ日本と海外の文化相互作用
  • 9
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 10
    「日本語のクチコミは信じるな」...豪ワーホリ「悪徳…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story