コラム

「今やアメリカの指導者は嘘つきで英雄などどこにもいない」元CIA工作員のコロナ在宅日記

2020年06月03日(水)18時30分

シマリスとの戦いに疲れてひと休みする?愛犬のモホーク GLENN CARLE

<アメリカは常に成功し問題を解決する国だった。それが今では指導者は嘘つきで、英雄なんてどこにもいない――無能で腐敗した大統領が大手を振る国のコロナな日常>

わが家の庭にシマリスの一家が住み着き、芝生を掘って巣穴を作った。この不届きな一家を追って成敗しようと、愛犬のモホークも芝生を掘った。おかげで被害は拡大した。モホークは番犬のはずだが、小さな害獣の侵入に過剰反応し、事態をさらに悪化させている。

わが家の庭の状況は、新型コロナウイルスに翻弄される社会の絶好のメタファーだ。

3日前、私はスーパーマーケットに足を踏み入れた。妻も私も感染を免れているが、自宅以外の建物を訪れるのは実に72日ぶりで、これはかなり緊張した。客はほとんどいなかった。誰もがマスクを着け、他の人と擦れ違わないよう床の矢印をたどって歩いていた。

ここマサチューセッツ州とアメリカの半分で、日ごとの死者と新規感染者はゆっくりと減り続けている。国の残りの半分では、死者と感染者が増えている。

5月26日午後12時30分、アメリカの死者は10万人に達した。買ったばかりのアボカドと牛乳にそれだけの危険を冒す価値があったのか、帰りの車の中で疑問が湧いた。

ウイルスに対する私たちの唯一の武器は、社会的距離を取ることだ。私と家族は社会的距離戦略の継続を強く支持しながら、それに伴う経済的・社会的コストの深刻さに気付いている。それでもトランプ米大統領と共和党支持者は、経済再開と社会が正常に「見える」ことが再選のために重要だと考えている。国民の命を守ることよりもだ。

学校や企業の再開は安全なはずがない

わが家に近いビーチは6月1日に再開する予定だが、家族は誰も行かない。多くの人々がマスクも着けず、肘がぶつかり合うくらいの距離で立ち飲みのバーに群がる他のビーチの画像を見て、私たちはぞっとした。

それに、どれだけ対策を講じても、飛行機による移動が安全とは思えない。学校や企業の活動再開も安全なはずがない。

新型コロナウイルスのせいで1日に約1500人のアメリカ人が死んでいるというのに、政府はスポーツイベントや経済活動の再開を求めている。もはや過失致死罪に当たる行為だが、死者が出ることなど承知の上なのかもしれない。

私が13歳のとき、月を目指したアポロ13号は事故に遭遇した。宇宙飛行士はいつだって英雄だったから、私は彼らが問題を解決できると信じていた。実際、乗組員は問題を解決し、危機を勝利に変えた。アメリカは常に成功し、問題を克服する国だった。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、麻薬犯罪組織の存在否定 米のテロ組織指

ビジネス

英予算責任局、予算案発表時に成長率予測を下方修正へ

ビジネス

独IFO業況指数、11月は予想外に低下 景気回復期

ワールド

和平案巡り協議継続とゼレンスキー氏、「ウクライナを
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story