「陰」のナショナリズムが流行る時──250年の歴史の中で
第二次大戦後の75年間はおおむね、前者の開放的ナショナリズムが人々の理想だった。ただ1980年代後半、私は熱烈な日本人ナショナリストから、アメリカ人と日本人が「世界を支配」すべきだと言われたことがある。両国の巨大な経済力は人種的優越性を証明しているというのがその理由だった。
数十年にわたるグローバル化による社会の疲弊、経済的混乱、かつてない民族的・人種的多様化の結果、今は「彼ら」より「われわれ」が幅を利かせる時代になった。あらゆる社会と個人は、自分たちが共有できる信条や歴史、理想の「神話」を必要としている。それによって「大きな家族」の一員としての安心感を得られるのだ。私は大きな社会正義、つまり国家のために自分を犠牲にした同僚を何人も見てきた。
だが、ナショナリズムは究極的には自己愛の表現だ。そして自己愛は利己主義に走りやすい。誰かを「他者」と見なすとき、ナショナリズムは私たちを互いに対立させ、自分たちと他者の両方を危険にさらしかねない。残念ながら、人間は理性より感情的衝動のほうが強いようだ。
<2019年11月26日号掲載>
11月26日号(11月19日発売)は「プラスチック・クライシス」特集。プラスチックごみは海に流出し、魚や海鳥を傷つけ、最後に人類自身と経済を蝕む。「冤罪説」を唱えるプラ業界、先進諸国のごみを拒否する東南アジア......。今すぐ私たちがすべきこととは。
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